古今和歌集 巻十九 雑体:歌の配置・コメント付

目次
1001
不知
1002
貫之
1003
忠岑
1004
忠岑
1005
躬恒
1006
伊勢
1007
不知
1008
不知
1009
不知
1010
貫之
1011
不知
1012
素性
1013
敏行
1014
兼輔
1015
躬恒
1016
遍昭
1017
不知
1018
不知
1019
不知
1020
棟梁
1021
深養
1022
不知
1023
不知
1024
不知
1025
不知
1026
不知
1027
不知
1028
紀乳
1029
有友
1030
小町
1031
興風
1032
不知
1033
貞文
1034
淑人
1035
躬恒
1036
忠岑
1037
不知
1038
不知
1039
不知
1040
不知
1041
不知
1042
不知
1043
不知
1044
不知
1045
不知
1046
不知
1047
不知
1048
中興
1049
左大
1050
中興
1051
伊勢
1052
不知
1053
興風
1054
くそ
1055
讃岐
1056
大輔
1057
不知
1058
不知
1059
不知
1060
不知
1061
不知
1062
元方
1063
不知
1064
興風
1065
千里
1066
不知
1067
躬恒
1068
不知
   
 

※不知が51%(35/68)。
 長歌・俳諧歌を収録。長いのに短歌とされるこれいかに。それが滑稽の心。
 1002の貫之の歌には「くのそ」や「もり」などてんこもり。
 そして1054で突如出てくる「くそ」。
 そのくそは一体誰なのか。誰がここにこのくそを置いたのか。におうのは貫之。

 
 

巻十九:雑体

   
   1001
詞書 短歌:題しらす
作者 よみ人しらす
あはむとおもへは
あふことの まれなるいろに おもひそめ わかみはつねに あまくもの はるるときなく ふしのねの もえつつとはに おもへとも あふことかたし なにしかも ひとをうらみむ わたつみの おきをふかめて おもひてし おもひをいまは いたつらに なりぬへらなり ゆくみつの たゆるときなく かくなわに おもひみたれて ふるゆきの けなはけぬへく おもへとも えふのみなれは なほやます おもひはふかし あしひきの やましたみつの こかくれて たきつこころを たれにかも あひかたらはむ いろにいては ひとしりぬへみ すみそめの ゆふへになれは ひとりゐて あはれあはれと なけきあまり せむすへなみに にはにいてて たちやすらへは しろたへの ころものそてに おくつゆの けなはけぬへく おもへとも なほなけかれぬ はるかすみ よそにもひとに あはむとおもへは
   
  1002
詞書 短歌:ふるうたたてまつりし時の
もくろくのそのなかうた
作者 つらゆき(紀貫之)
もりやしぬらむ
ちはやふる かみのみよより くれたけの よよにもたえす あまひこの おとはのやまの はるかすみ おもひみたれて さみたれの そらもととろに さよふけて やまほとときす なくことに たれもねさめて からにしき たつたのやまの もみちはを みてのみしのふ かみなつき しくれしくれて ふゆのよの にはもはたれに ふるゆきの なほきえかへり としことに ときにつけつつ あはれてふ ことをいひつつ きみをのみ ちよにといはふ よのひとの おもひするかの ふしのねの もゆるおもひも あかすして わかるるなみた ふちころも おれるこころも やちくさの ことのはことに すめらきの おほせかしこみ まきまきの うちにつくすと いせのうみの うらのしほかひ ひろひあつめ とれりとすれと たまのをの みしかきこころ おもひあへす なほあらたまの としをへて おほみやにのみ ひさかたの ひるよるわかす つかふとて かへりみもせぬ わかやとの しのふくさおふる いたまあらみ ふるはるさめの もりやしぬらむ
   
  1003
詞書 短歌:ふるうたにくはへて
たてまつれるなかうた
作者 壬生忠岑
わかえつつ見む
くれたけの よよのふること なかりせは いかほのぬまの いかにして おもふこころを のはへまし あはれむかしへ ありきてふ ひとまろこそは うれしけれ みはしもなから ことのはを あまつそらまて きこえあけ すゑのよよまて あととなし いまもおほせの くたれるは ちりにつけとや ちりのみに つもれることを とはるらむ これをおもへは けたものの くもにほえけむ ここちして ちちのなさけも おもほえす ひとつこころそ ほこらしき かくはあれとも てるひかり ちかきまもりの みなりしを たれかはあきの くるかたに あさむきいてて みかきもり とのへもるみの みかきより をさをさしくも おもほえす ここのかさねの なかにては あらしのかせも きかさりき いまはのやまし ちかけれは はるはかすみに たなひかれ なつはうつせみ なきくらし あきはしくれに そてをかし ふゆはしもにそ せめらるる かかるわひしき みなからに つもれるとしを しるせれは いつつのむつに なりにけり これにそはれる わたくしの おいのかすさへ やよけれは みはいやしくて としたかき ことのくるしさ かくしつつ なからのはしの なからへて なにはのうらに たつなみの なみのしわにや おほほれむ さすかにいのち をしけれは こしのくになる しらやまの かしらはしろく なりぬとも おとはのたきの おとにきく おいすしなすの くすりかも きみかやちよを わかえつつみむ
   
  1004
詞書 短歌:ふるうたにくはへて
たてまつれるなかうた(反歌)
作者 壬生忠岑
原文 君か世に あふさか山の いはし水
 こかくれたりと 思ひけるかな
かな きみかよに あふさかやまの いはしみつ
 こかくれたりと おもひけるかな
   
  1005
詞書 冬のなかうた
作者 凡河内躬恒
すくしつるかな
ちはやふる かみなつきとや けさよりは くもりもあへす はつしくれ もみちとともに ふるさとの よしののやまの やまあらしも さむくひことに なりゆけは たまのをとけて こきちらし あられみたれて しもこほり いやかたまれる にはのおもに むらむらみゆる ふゆくさの うへにふりしく しらゆきの つもりつもりて あらたまの としをあまたも すくしつるかな
   
  1006
詞書 七条のきさきうせたまひにける
のちによみける
作者 伊勢(伊勢の御)
よそにこそ見め
おきつなみ あれのみまさる みやのうちは としへてすみし いせのあまも ふねなかしたる ここちして よらむかたなく かなしきに なみたのいろの くれなゐは われらかなかの しくれにて あきのもみちと ひとひとは おのかちりちり わかれなは たのむかけなく なりはてて とまるものとは はなすすき きみなきにはに むれたちて そらをまかねは はつかりの なきわたりつつ よそにこそみめ
   
  1007
詞書 旋頭歌:題しらす
作者 よみ人しらす
原文 うちわたす をち方人に 物まうすわれ
 そのそこに しろくさけるは なにの花そも
かな うわたす をちかたひとに ものまうすわれ
 そのそこに しろくさけるは なにのはなそも
   
  1008
詞書 旋頭歌:返し
作者 よみ人しらす
原文 君されは のへにまつさく 見れとあかぬ花
 まひなしに たたなのるへき 花のななれや
かな はるされは のへにまつさく みれとあかぬはな
 まひなしに たたなのるへき はなのななれや
   
  1009
詞書 旋頭歌:題しらす
作者 よみ人しらす
原文 はつせ河 ふるかはのへに ふたもとあるすき
 年をへて 又もあひ見む ふたもとあるすき
かな はつせかは ふるかはのへに ふたもとあるすき
 としをへて またもあひみむ ふたもとあるすき
   
  1010
詞書 旋頭歌:題しらす
作者 つらゆき(紀貫之)
原文 きみかさす みかさの山の もみちはのいろ
 神な月 しくれのあめの そめるなりけり
かな きみかさす みかさのやまの もみちはのいろ
 かみなつき しくれのあめの そめるなりけり
   
  1011
詞書 誹諧歌:題しらす
作者 よみ人しらす
原文 梅花 見にこそきつれ 鶯の
 人く人くと いとひしもをる
かな うめのはな みにこそきつれ うくひすの
 ひとくひとくと いとひしもをる
   
  1012
詞書 誹諧歌:題しらす
作者 素性法師
原文 山吹の 花色衣 ぬしやたれ
 とへとこたへす くちなしにして
かな やまふきの はないろころも ぬしやたれ
 とへとこたへす くちなしにして
   
  1013
詞書 誹諧歌:題しらす
作者 藤原敏行朝臣
原文 いくはくの 田をつくれはか 郭公
 してのたをさを あさなあさなよふ
かな いくはくの たをつくれはか ほとときす
 してのたをさを あさなあさなよふ
   
  1014
詞書 誹諧歌:七月六日たなはたの心をよみける
作者 藤原かねすけの朝臣(藤原兼輔)
原文 いつしかと またく心を はきにあけて
 あまのかはらを けふやわたらむ
かな いつしかと またくこころを はきにあけて
 あまのかはらを けふやわたらむ
   
  1015
詞書 題しらす
作者 凡河内みつね(凡河内躬恒)
原文 むつことも またつきなくに あけぬめり
 いつらは秋の なかしてふよは
かな むつことも またつきなくに あけぬめり
 いつらはあきの なかしてふよは
   
  1016
詞書 題しらす
作者 僧正へんせう(遍昭、良岑宗貞)
原文 秋ののに なまめきたてる をみなへし
 あなかしかまし 花もひと時
かな あきののに なまめきたてる をみなへし
 あなかしかまし はなもひととき
   
  1017
詞書 題しらす
作者 よみ人しらす
原文 あきくれは のへにたはるる 女郎花
 いつれの人か つまて見るへき
かな あきくれは のへにたはるる をみなへし
 いつれのひとか つまてみるへき
   
  1018
詞書 題しらす
作者 よみ人しらす
原文 秋きりの はれてくもれは をみなへし
 花のすかたそ 見えかくれする
かな あききりの はれてくもれは をみなへし
 はなのすかたそ みえかくれする
   
  1019
詞書 題しらす
作者 よみ人しらす
原文 花と見て をらむとすれは をみなへし
 うたたあるさまの 名にこそ有りけれ
かな はなとみて をらむとすれは をみなへし
 うたたあるさまの なにこそありけれ
   
  1020
詞書 誹諧歌:寛平御時きさいの宮の歌合のうた
作者 在原むねやな(在原棟梁)
原文 秋風に ほころひぬらし ふちはかま
 つつりさせてふ 蟋蟀なく
かな あきかせに ほころひぬらし ふちはかま
 つつりさせてふ きりきりすなく
   
  1021
詞書 誹諧歌:あすはるたたむとしける日、
となりの家のかたより風の雪をふきこしけるを見て、そのとなりへよみてつかはしける
作者 清原ふかやふ(清原深養父)
原文 冬なから 春の隣の ちかけれは
 なかかきよりそ 花はちりける
かな ふゆなから はるのとなりの ちかけれは
 なかかきよりそ はなはちりける
   
  1022
詞書 誹諧歌:題しらす
作者 よみ人しらす
原文 いそのかみ ふりにしこひの 神さひて
 たたるに我は いそねかねつる
かな いそのかみ ふりにしこひの かみさひて
 たたるにわれは いそねかねつる
   
  1023
詞書 誹諧歌:題しらす
作者 よみ人しらす
原文 枕より あとよりこひの せめくれは
 せむ方なみそ とこなかにをる
かな まくらより あとよりこひの せめくれは
 せむかたなみそ とこなかにをる
   
  1024
詞書 誹諧歌:題しらす
作者 よみ人しらす
原文 こひしきか 方も方こそ 有りときけ
 たてれをれとも なき心ちかな
かな こひしきか かたもかたこそ ありときけ
 たてれをれとも なきここちかな
   
  1025
詞書 誹諧歌:題しらす
作者 よみ人しらす
原文 ありぬやと 心みかてら あひ見ねは
 たはふれにくき まてそこひしき
かな ありぬやと こころみかてら あひみねは
 たはふれにくき まてそこひしき
   
  1026
詞書 誹諧歌:題しらす
作者 よみ人しらす
原文 みみなしの 山のくちなし えてしかな
 思ひの色の したそめにせむ
かな みみなしの やまのくちなし えてしかな
 おもひのいろの したそめにせむ
   
  1027
詞書 誹諧歌:題しらす
作者 よみ人しらす
原文 葦引の 山田のそほつ おのれさへ
 我をほしてふ うれはしきこと
かな あしひきの やまたのそほつ おのれさへ
 われをほしてふ うれはしきこと
   
  1028
詞書 誹諧歌:題しらす
作者 きのめのと(紀乳母)
原文 ふしのねの ならぬおもひに もえはもえ
 神たにけたぬ むなしけふりを
かな ふしのねの ならぬおもひに もえはもえ
 かみたにけたぬ むなしけふりを
   
  1029
詞書 誹諧歌:題しらす
作者 きのありとも(紀有友)
原文 あひ見まく 星はかすなく 有りなから
 人に月なみ 迷ひこそすれ
かな あひみまく ほしはかすなく ありなから
 ひとにつきなみ まよひこそすれ
   
  1030
詞書 誹諧歌:題しらす
作者 小野小町
原文 人にあはむ 月のなきには 思ひおきて
 むねはしり火に 心やけをり
かな ひとにあはむ つきのなきには おもひおきて
 むねはしりひに こころやけをり
   
  1031
詞書 誹諧歌:寛平御時きさいの宮の歌合のうた
作者 藤原おきかせ(藤原興風)
原文 春霞 たなひくのへの わかなにも
 なり見てしかな 人もつむやと
かな はるかすみ たなひくのへの わかなにも
 なりみてしかな ひともつむやと
   
  1032
詞書 誹諧歌:題しらす
作者 よみ人しらす
原文 おもへとも 猶うとまれぬ 春霞
 かからぬ山も あらしとおもへは
かな おもへとも なほうとまれぬ はるかすみ
 かからぬやまも あらしとおもへは
   
  1033
詞書 誹諧歌:題しらす
作者 平貞文
原文 春の野の しけき草はの つまこひに
 とひたつきしの ほろろとそなく
かな はるののの しけきくさはの つまこひに
 とひたつきしの ほろろとそなく
   
  1034
詞書 誹諧歌:題しらす
作者 きのよしひと(紀淑人)
原文 秋ののに つまなきしかの 年をへて
 なそわかこひの かひよとそなく
かな あきののに つまなきしかの としをへて
 なそわかこひの かひよとそなく
   
  1035
詞書 誹諧歌:題しらす
作者 みつね(凡河内躬恒)
原文 蝉の羽の ひとへにうすき 夏衣
 なれはよりなむ 物にやはあらぬ
かな せみのはの ひとへにうすき なつころも
 なれはよりなむ ものにやはあらぬ
   
  1036
詞書 誹諧歌:題しらす
作者 たたみね(壬生忠岑)
原文 かくれぬの したよりおふる ねぬなはの
 ねぬなはたてし くるないとひそ
かな かくれぬの したよりおふる ねぬなはの
 ねぬなはたてし くるないとひそ
   
  1037
詞書 誹諧歌:題しらす
作者 よみ人しらす
原文 ことならは 思はすとやは いひはてぬ
 なそ世中の たまたすきなる
かな ことならは おもはすとやは いひはてぬ
 なそよのなかの たまたすきなる
   
  1038
詞書 誹諧歌:題しらす
作者 よみ人しらす
原文 おもふてふ 人の心の くまことに
 たちかくれつつ 見るよしもかな
かな おもふてふ ひとのこころの くまことに
 たちかくれつつ みるよしもかな
   
  1039
詞書 誹諧歌:題しらす
作者 よみ人しらす
原文 思へとも おもはすとのみ いふなれは
 いなやおもはし 思ふかひなし
かな おもへとも おもはすとのみ いふなれは
 いなやおもはし おもふかひなし
   
  1040
詞書 誹諧歌:題しらす
作者 よみ人しらす
原文 我をのみ 思ふといはは あるへきを
 いてや心は おほぬさにして
かな われをのみ おもふといはは あるへきを
 いてやこころは おほぬさにして
   
  1041
詞書 誹諧歌:題しらす
作者 よみ人しらす
原文 われを思ふ 人をおもはぬ むくいにや
 わか思ふ人の 我をおもはぬ
かな われをおもふ ひとをおもはぬ むくひにや
 わかおもふひとの われをおもはぬ
   
  1042
詞書 誹諧歌:題しらす
作者 よみ人しらす
(一本、ふかやふ(清原深養父))
原文 思ひけむ 人をそともに おもはまし
 まさしやむくい なかりけりやは
かな おもひけむ ひとをそともに おもはまし
 まさしやむくひ なかりけりやは
   
  1043
詞書 誹諧歌:題しらす
作者 よみ人しらす
原文 いててゆかむ 人をととめむ よしなきに
 となりの方に はなもひぬかな
かな いててゆかむ ひとをととめむ よしなきに
 となりのかたに はなもひぬかな
   
  1044
詞書 誹諧歌:題しらす
作者 よみ人しらす
原文 紅に そめし心も たのまれす
 人をあくには うつるてふなり
かな くれなゐに そめしこころも たのまれす
 ひとをあくには うつるてふなり
   
  1045
詞書 誹諧歌:題しらす
作者 よみ人しらす
原文 いとはるる わか身ははるの こまなれや
 のかひかてらに はなちすてつる
かな いとはるる わかみははるの こまなれや
 のかひかてらに はなちすてつる
   
  1046
詞書 誹諧歌:題しらす
作者 よみ人しらす
原文 鶯の こそのやとりの ふるすとや
 我には人の つれなかるらむ
かな うくひすの こそのやとりの ふるすとや
 われにはひとの つれなかるらむ
   
  1047
詞書 誹諧歌:題しらす
作者 よみ人しらす
原文 さかしらに 夏は人まね ささのはの
 さやくしもよを わかひとりぬる
かな さかしらに なつはひとまね ささのはの
 さやくしもよを わかひとりぬる
   
  1048
詞書 誹諧歌:題しらす
作者 平中興
原文 逢ふ事の 今ははつかに なりぬれは
 夜ふかからては 月なかりけり
かな あふことの いまははつかに なりぬれは
 よふかからては つきなかりけり
   
  1049
詞書 誹諧歌:題しらす
作者 左のおほいまうちきみ
原文 もろこしの よしのの山に こもるとも
 おくれむと思ふ 我ならなくに
かな もろこしの よしののやまに こもるとも
 おくれむとおもふ われならなくに
   
  1050
詞書 誹諧歌:題しらす
作者 なかき(平中興)
原文 雲はれぬ あさまの山の あさましや
 人の心を 見てこそやまめ
かな くもはれぬ あさまのやまの あさましや
 ひとのこころを みてこそやまめ
   
  1051
詞書 誹諧歌:題しらす
作者 伊勢(伊勢の御)
原文 なにはなる なからのはしも つくるなり
 今はわか身を なににたとへむ
かな なにはなる なからのはしも つくるなり
 いまはわかみを なににたとへむ
   
  1052
詞書 誹諧歌:題しらす
作者 よみ人しらす
原文 まめなれと なにそはよけく かるかやの
 みたれてあれと あしけくもなし
かな まめなれと なにそはよけく かるかやの
 みたれてあれと あしけくもなし
   
  1053
詞書 誹諧歌:題しらす
作者 おきかせ(藤原興風)
原文 なにかその 名の立つ事の をしからむ
 しりてまとふは 我ひとりかは
かな なにかその なのたつことの をしからむ
 しりてまとふは われひとりかは
   
  1054
詞書 誹諧歌:いとこなりけるを
とこによそへて人のいひけれは
作者 くそ(久曽・『目録』。詳細不明)
原文 よそなから わか身にいとの よるといへは
 たたいつはりに すくはかりなり
かな よそなから わかみにいとの よるといへは
 たたいつはりに すくはかりなり
   
  1055
詞書 誹諧歌:題しらす
作者 さぬき(讃岐・『目録』。詳細不明)
原文 ねき事を さのみききけむ やしろこそ
 はてはなけきの もりとなるらめ
かな ねきことを さのみききけむ やしろこそ
 はてはなけきの もりとなるらめ
   
  1056
詞書 誹諧歌:題しらす
作者 大輔(詳細不明)
原文 なけきこる 山としたかく なりぬれは
 つらつゑのみそ まつつかれける
かな なけきこる やまとしたかく なりぬれは
 つらつゑのみそ まつつかれける
   
  1057
詞書 誹諧歌:題しらす
作者 よみ人しらす
原文 なけきをは こりのみつみて あしひきの
 山のかひなく なりぬへらなり
かな なけきをは こりのみつみて あしひきの
 やまのかひなく なりぬへらなり
   
  1058
詞書 誹諧歌:題しらす
作者 よみ人しらす
原文 人こふる 事をおもにと になひもて
 あふこなきこそ わひしかりけれ
かな ひとこふる ことをおもにと になひもて
 あふこなきこそ わひしかりけれ
   
  1059
詞書 誹諧歌:題しらす
作者 よみ人しらす
原文 よひのまに いてていりぬる みか月の
 われて物思ふ ころにもあるかな
かな よひのまに いてていりぬる みかつきの
 われてものおもふ ころにもあるかな
   
  1060
詞書 誹諧歌:題しらす
作者 よみ人しらす
原文 そゑにとて とすれはかかり かくすれは
 あないひしらす あふさきるさに
かな そゑにとて とすれはかかり かくすれは
 あないひしらす あふさきるさに
   
  1061
詞書 誹諧歌:題しらす
作者 よみ人しらす
原文 世中の うきたひことに 身をなけは
 ふかき谷こそ あさくなりなめ
かな よのなかの うきたひことに みをなけは
 ふかきたにこそ あさくなりなめ
   
  1062
詞書 誹諧歌:題しらす
作者 在原元方
原文 よのなかは いかにくるしと 思ふらむ
 ここらの人に うらみらるれは
かな よのなかは いかにくるしと おもふらむ
 ここらのひとに うらみらるれは
   
  1063
詞書 誹諧歌:題しらす
作者 よみ人しらす
原文 なにをして 身のいたつらに おいぬらむ
 年のおもはむ 事そやさしき
かな なにをして みのいたつらに おいぬらむ
 としのおもはむ ことそやさしき
   
  1064
詞書 誹諧歌:題しらす
作者 おきかせ(藤原興風)
原文 身はすてつ 心をたにも はふらさし
 つひにはいかか なるとしるへく
かな みはすてつ こころをたにも はふらさし
 つひにはいかか なるとしるへく
   
  1065
詞書 誹諧歌:題しらす
作者 千さと(大江千里)
原文 白雪の 友にわか身は ふりぬれと
 心はきえぬ 物にそありける
かな しらゆきの ともにわかみは ふりぬれと
 こころはきえぬ ものにそありける
   
  1066
詞書 誹諧歌:題しらす
作者 よみ人しらす
原文 梅花 さきてののちの 身なれはや
 すき物とのみ 人のいふらむ
かな うめのはな さきてののちの みなれはや
 すきものとのみ ひとのいふらむ
   
  1067
詞書 誹諧歌:
法皇にし河におはしましたりける日、
さる山のかひにさけふといふことを
題にてよませたまうける
作者 みつね(凡河内躬恒)
原文 わひしらに ましらななきそ あしひきの
 山のかひある けふにやはあらぬ
かな わひしらに ましらななきそ あしひきの
 やまのかひある けふにやはあらぬ
   
  1068
詞書 誹諧歌:題しらす
作者 よみ人しらす
原文 世をいとひ このもとことに たちよりて
 うつふしそめの あさのきぬなり
かな よをいとひ このもとことに たちよりて
 うつふしそめの あさのきぬなり