古事記~根の国②スサノオの歓迎 原文対訳

根の国① 古事記
上巻 第三部
大国主の物語
根の国②
スサノオの歓迎(迫害)
根の国③
原文 書き下し
(武田祐吉)
現代語訳
(武田祐吉)
爾其大神出見而。 ここにその大神出で見て、 そこでその大神が出て見て、
告此者謂之
葦原色許男。
「こは葦原色許男
あしはらしこをの命といふぞ」
とのりたまひて、
「これは
アシハラシコヲの命だ」
とおつしやつて、
即喚入而。 すなはち喚び入れて、 呼よび入れて
令寢其蛇室。 その蛇へみの室むろやに寢しめたまひき。 蛇のいる室むろに寢させました。
     
於是其妻
須勢理毘賣命。
ここにその妻みめ
須勢理毘賣すせりびめの命、
そこでスセリ姫の命が
以蛇比禮〈二字以音〉
授其夫云
蛇のひれを
その夫に授けて、
蛇の領巾ひれを
その夫に與えて言われたことは、
其蛇將咋。 「その蛇咋くはむとせば、 「その蛇が食おうとしたなら、
以此比禮
三擧打撥。
このひれを
三たび擧ふりて打ち撥はらひたまへ」
とまをしたまひき。
この領巾ひれを
三度振つて打ち撥はらいなさい」
と言いました。
     
故如教者。 かれ教のごとせしかば、 それで大國主の命は、
教えられた通りにしましたから、
蛇自靜故。 蛇おのづから靜まりぬ。 蛇が自然に靜まつたので
平寢出之。 かれ平やすく寢て出でましき。 安らかに寢てお出になりました。
     
亦來日夜者。 また來る日の夜は、 また次の日の夜は
入呉公與蜂室。 呉公むかでと蜂との
室むろやに入れたまひしを、
呉公むかでと蜂はちとの
室むろにお入れになりましたのを、
且授呉公蜂之比禮。 また呉公むかで蜂のひれを授けて、 また呉公と蜂の領巾を與えて
教如先故。 先のごと教へしかば、 前のようにお教えになりましたから
平出之。 平やすく出でたまひき。 安らかに寢てお出になりました。
     
亦鳴鏑射入
大野之中。
また鳴鏑なりかぶらを
大野の中に射入れて、
次には鏑矢かぶらやを
大野原の中に射て入れて、
令採其矢。 その矢を採らしめたまひき。 その矢を採とらしめ、
故入其野時。 かれその野に入りましし時に、 その野におはいりになつた時に
即以火
廻燒其野。
すなはち火もちて
その野を燒き廻らしつ。
火をもつて
その野を燒き圍みました。
     
於是不知所
出之間。
ここに出づる所を
知らざる間に、
そこで出る所を
知らないで困つている時に、
鼠來云。 鼠來ていはく、 鼠が來て言いますには、
内者富良富良〈此四字以音〉
外者須夫須夫〈此四字以音〉
如此言故。
「内はほらほら、
外とはすぶすぶ」と、
かく言ひければ、
「内うちはほらほら、
外そとはすぶすぶ」と言いました。
こう言いましたから
蹈其處者。 其處そこを踏みしかば、 そこを踏んで
落隱入之間。 落ち隱り入りし間に、 落ちて隱れておりました間に、
火者燒過。 火は燒け過ぎき。 火は燒けて過ぎました。
爾其鼠。 ここにその鼠、 そこでその鼠が
咋持
其鳴鏑。
その鳴鏑なりかぶらを
咋くひて
その鏑矢を
食わえ
出來而奉也。 出で來て奉りき。 出して來て奉りました。
其矢羽者。 その矢の羽は、 その矢の羽はねは
其鼠子等
皆喫也。
その鼠の子ども
みな喫ひたりき。
鼠の子どもが
皆食べてしまいました。
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