古事記 髮長比賣~原文対訳

ワニのカニの歌 古事記
中巻⑧
15代 応神天皇
愛の歌物語
4 髮長比賣
花橘の歌
原文 書き下し
(武田祐吉)
現代語訳
(武田祐吉)
天皇。
聞看。
日向國諸縣君之女。
名髮長比賣。
其顏容麗美。
 天皇、
日向の國の
諸縣もらがたの君が女、
名は髮長かみなが比賣
それ顏容麗美かほよしと聞こしめして、
 また天皇が、
日向の國の
諸縣むらがたの君の女むすめの
髮長姫かみながひめが
美しいとお聞きになつて、
將使而。 使はむとして、 お使い遊ばそうとして、
喚上之時。 喚めし上げたまふ時に、 お召めし上げなさいます時に、
     
其太子大雀命。 その太子ひつぎのみこ大雀の命、 太子のオホサザキの命が
見其孃子。
泊于難波津而。
その孃子をとめの
難波津に泊はてたるを見て、
その孃子の
難波津に船つきしているのを
御覽になつて、
     
感其
姿容之端正。
その姿容かたちの端正うつくしきに
感めでたまひて、
その容姿のりつぱなのに
感心なさいまして、
即誂告。
建内宿禰大臣。
すなはち
建内たけしうちの宿禰すくねの大臣に
誂あとらへてのりたまはく、
タケシウチの宿禰すくねに
お頼みになるには
是自日向
喚上之
髮長比賣者。
「この日向より
喚めし上げたまへる
髮長かみなが比賣は、
「この日向から
お召し上げになつた
髮長姫を、
請白
天皇之大御所而。
天皇の大御所みもとに
請ひ白して、
陛下の御もとにお願いして
令賜於吾。 吾あれに賜はしめよ」
とのりたまひき。
わたしに賜わるようにしてくれ」
と仰せられました。
     
爾建内宿禰大臣。 ここに建内の宿禰の大臣、 依つてタケシウチの宿禰の大臣が
請大命者。 大命おほみことを請ひしかば、 天皇の仰せを願いましたから、
天皇。即
以髮長比賣。
天皇すなはち
髮長かみなが比賣をその御子に賜ひき。
天皇が
髮長姫をその御子にお授けになりました。
     
賜于其御子。
所賜状者。
賜ふ状は、 お授けになる樣は、
天皇。聞看豐明之日。 天皇の豐とよの明あかり聞こしめしける日に、 天皇が御酒宴を遊ばされた日に、
於髮長比賣令握大御酒柏。 髮長比賣に大御酒の柏かしはを取らしめて、 髮長姫にお酒を注ぐ柏葉かしわを取らしめて、
賜其太子。 その太子に賜ひき。 その太子に賜わりました。
ワニのカニの歌 古事記
中巻⑧
15代 応神天皇
愛の歌物語
4 髮長比賣
花橘の歌