源氏物語 行幸:巻別和歌9首・逐語分析

野分 源氏物語
和歌一覧
各巻別内訳
29帖 行幸
藤袴

 
 源氏物語・行幸(みゆき)巻の和歌9首を抜粋一覧化し、現代語訳と歌い手を併記、原文対訳の該当部と通じさせた。

 

 内訳:4(源氏)、1×5(冷泉帝、玉鬘、大宮=頭中将母、末摘花、頭中将)※最初最後
 

行幸・和歌の対応の程度と歌数
和歌間の文字数
即答 0  40字未満
応答 4首  40~100字未満
対応 4首  ~400~1000字+対応関係文言
単体 1首  単一独詠・直近非対応

※分類について和歌一覧・総論部分参照。

 

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 上下の句に分割したバージョン。見やすさに応じて。

 なお、付属の訳はあくまで通説的理解の一例なので、訳が原文から離れたり対応していない場合、より精度の高い訳を検討されたい。
 


  原文
(定家本校訂)
現代語訳
(渋谷栄一)
390
雪深
小塩山
たつ雉の
古き跡をも
今日は尋ねよ
〔冷泉帝〕雪の深い
小塩山に
飛び立つ雉のように
古例に従って
今日はいらっしゃればよかったのに
391
小塩山
深雪積もれる
松原に
今日ばかりなる
跡やなからむ
〔源氏〕小塩山に
深雪が積もった
松原に
今日ほどの盛儀は
先例がないでしょう
392
うちきらし
ぐもりせし
行幸には
さやかに空の
やは見し
〔玉鬘〕雪が散らついて
朝の間の
行幸では
はっきりと
日の光は見えませんでした
393
あかねさす
は空に
らぬを
などて行幸
目をきらしけむ
〔源氏〕日の
光は
曇りなく輝いていましたのに
どうして行幸の日に
雪のために目を曇らせたのでしょう
394
贈:
ふたかたに
言ひもてゆけば
玉櫛笥
わが身はなれぬ
懸子なりけり
〔大宮→玉鬘〕どちらの方から
言いましても

あなたはわたしにとって切っても切れない
孫に当たる方なのですね
395
わが身こそ
みられけれ
唐衣
君が袂に
馴れずと思へば
〔末摘花〕わたし自身が
恨めしく思われます

あなたのお側に
いつもいることができないと思いますと
396
唐衣
また唐衣
唐衣

かへすがへす
唐衣なる
〔源氏〕唐衣、
また唐衣、
唐衣
いつもいつも
唐衣とおっしゃいますね
397
めしや
沖つ玉
かづくまで
磯がくれける
海人の心よ
〔頭中将〕恨めしいことですよ。
玉裳を着る
今日まで
隠れていた
人の心が
398
よるべなみ
かかる渚に
うち寄せて
海人も尋ねぬ
屑とぞ見し
〔源氏〕寄る辺がないので、
このような
わたしの所に身を寄せて
誰にも捜してもらえない
気の毒な子だと思っておりました