枕草子121段 いみじう心づきなきもの

正月に 枕草子
上巻下
121段
いみじう心づきなき
わびしげ

(旧)大系:121段
新大系:116段、新編全集:117段
(以上全て三巻本系列本。しかし後二本の構成は2/3が一致せず、混乱を招くので、三巻本理論の根本たる『(旧)大系』に準拠すべきと思う)
(旧)全集=能因本:125段, 306段(心づきなきもの)
 


 
 いみじう心づきなきもの 祭、禊など、すべて、男の物見るに、ただ一人乗りて見るこそあれ。いかなる心にかあらむ。やむごとなからずとも、わかき男などのゆかしがるをも、ひき乗せよかし。すき影にただ一人ただよひて、心ひとつにまもりゐたらむよ。いかばかり心せばく、けにくきならむとぞおぼゆる。
 

 ものへもいき、寺へもまうづる日の雨。使ふ人などの、「我をばおぼさず、なにがしこそ、ただいまの時の人」などいふを、ほの聞きたる。人よりはすこしにくしと思ふ人の、おしはかりごとうちし、すずろなるものうらみし、われさかしがる。