古事記 サホ姫の遺言~原文対訳

本牟智和氣 古事記
中巻④
11代 垂仁天皇
サホ姫サホ彦兄妹物語
⑩サホ姫の遺言
幼稚なホムチのワケ
原文 書き下し
(武田祐吉)
現代語訳
(武田祐吉)
又命詔。
何爲日足奉。
また命詔したまはく
「いかにして日足ひたしまつらむ」
とのりたまへば、
また
「どのようにしてお育て申そうか」
と仰せられましたところ、
     
答白。 答へて白さく、  
取御母。 「御母みおもを取り、 「乳母を定め

大湯坐。
若湯坐。
大湯坐おほゆゑ、
若湯坐わかゆゑを
定めて、
御養育掛りを
きめて
宜日足奉。 日足しまつるべし」
とまをしたまひき。
御養育申し上げましよう」
と申しました。
     
故隨其后白以。
日足奉也。
かれその后の
まをしたまひしまにまに、
日足ひたしまつりき。
依つてその皇后の
申されたように
お育て申しました。
     

美豆能小佩者誰解(問掛け=謎掛け)

     
又問其后曰。 またその后に問ひたまはく、 またその皇后に
汝所堅之
美豆能
小佩者
誰解。
「汝みましの堅めし
瑞みづの
小佩をひもは、
誰かも解かむ」
「あなたの結び堅めた
 
衣の紐は
誰が解くべきであるか」
〈美豆能三字
以音。(也)〉
   
  とのりたまひしかば、 とお尋ねになりましたから、
     
答白。 答へて白さく、  
旦波
比古多多須美智
宇斯王之女。
「旦波たにはの
比古多多須美智能宇斯
ひこたたすみちの
うしの王みこが女、
「丹波の
ヒコタタスミチノ
ウシの王の女の

兄比賣。
弟比賣。
名は
兄比賣えひめ
弟比賣おとひめ、
兄姫えひめ・
弟姫おとひめ
という
茲二女王。 この二柱の女王ひめみこ、 二人の女王は、
淨公民故。 淨き公民おほみたからにませば、 淨らかな民でありますから
宜使也。 使ひたまふべし」とまをしたまひき。 お使い遊ばしませ」と申しました。
     
然遂
殺其沙本比古王。
然ありて遂に
その沙本比古さほひこの王を
殺とりたまへるに、
かくて遂に
そのサホ彦の王を
討たれた時に、
其伊呂妹
亦從也。
その同母妹いろもも
從ひたまひき。
皇后も
共にお隱れになりました。
本牟智和氣 古事記
中巻④
11代 垂仁天皇
サホ姫サホ彦兄妹物語
⑩サホ姫の遺言
幼稚なホムチのワケ