古事記 飛鳥の由来~原文対訳

曾婆加理の悲劇 古事記
下巻②
17代 履中天皇
飛鳥の由来
事績
原文 書き下し
(武田祐吉)
現代語訳
(武田祐吉)

飛鳥の由来(隼人×明日か)

     
是以
詔曾婆訶理。
ここをもちて
曾婆訶里に詔りたまはく、
かくて
ソバカリに仰せられますには、
今日留此間而。 「今日は此處ここに留まりて、 「今日は此處に留まつて、
先給大臣位。 まづ大臣の位を賜ひて、 まずお前に大臣の位を賜わつて、
明日上幸。 明日上りまさむ」とのりたまひて、 明日大和に上ることにしよう」と仰せられて、
留其山口。 その山口に留まりて、 その山口に留まつて
即造假宮。 すなはち假かり宮を造りて、 假宮を造つて
忽爲豐樂。 俄に豐の樂あかりして、 急に酒宴をして、
乃於其隼人。
賜大臣位。
その隼人に大臣の位を賜ひて、 その隼人に大臣の位を賜わつて
百官令拜。 百官つかさづかさをして
拜をろがましめたまふに、
百官をして
これを拜ましめたので、
隼人歡喜。 隼人歡びて、 隼人が喜んで
以爲遂志。 志遂げぬと思ひき。 志成つたと思つていました。
     
爾詔其隼人。 ここにその隼人に詔りたまはく、 そこでその隼人に
今日與大臣。
飮同盞酒。
「今日大臣と
同おやじ盞うきの酒を飮まむとす」
と詔りたまひて、
「今日は大臣と共に
一つ酒盞の酒を飮もう」
と仰せられて、
共飮之時。 共に飮む時に、 共にお飮みになる時に、
隱面大鋺。 面おもを隱す大鋺まりに 顏を隱す大きな椀に
盛其進酒。 その進たてまつれる酒を盛りき。 その進める酒を盛りました。
     
於是王子先飮。 ここに王子みこまづ飮みたまひて、 そこで王子がまずお飮みになつて、
隼人後飮。 隼人後に飮む。 隼人が後に飮みます。
故其隼人飮時。 かれその隼人の飮む時に、 その隼人の飮む時に
大鋺覆面。 大鋺、面を覆ひたり。 大きな椀が顏を覆いました。
爾取出置席下之劍。 ここに席むしろの下に置ける
劒たちを取り出でて、
そこで座の下にお置きになつた
大刀を取り出して、
斬其隼人之頸。 その隼人が首を斬りたまひき。 その隼人の首をお斬りなさいました。
     

近つ飛鳥と遠つ飛鳥

     
乃明日上幸。 すなはち明日くるつひ、
上り幸でましき。
かようにして明くる日に
上つておいでになりました。
故號其地。
近飛鳥也。
かれ其地そこに名づけて
近ちかつ飛鳥あすかといふ。
依つて其處を
近つ飛鳥あすかと名づけます。
     
上到于倭。 倭やまとに上り到りまして 大和に上つておいでになつて
詔之。 詔りたまはく、 仰せられますには、
今日留此間。 「今日は此處に留まりて、 「今日は此處に留まつて
爲祓禊而。 祓禊はらへして、 禊祓はらいをして、
明日參出。 明日まゐ出でて、 明日出て
將拜神宮。 神宮かむみやを拜まむ」
とのりたまひき。
神宮に參拜しましよう」
と仰せられました。
故號其地謂
遠飛鳥也。
かれ其地そこに名づけて
遠つ飛鳥といふ。
それで其處を
遠つ飛鳥と名づけました。
曾婆加理の悲劇 古事記
下巻②
17代 履中天皇
飛鳥の由来
事績

 大阪の飛鳥が、近つ飛鳥、奈良の一般的な飛鳥が、遠つ飛鳥(明日香)。