紫式部集18 あひ見むと:原文対訳・逐語分析

17難波潟 紫式部集
第一部
若かりし頃

18あひ見むと
19行きめぐり
原文
(実践女子大本)
現代語訳
(渋谷栄一)
注釈
【渋谷栄一】
筑紫に肥前といふ所より、  筑紫にある肥前国というところから、  
文おこせたるを、 手紙を寄越したのだが、 【おこせたるを】-実践本「をこす」は定家の仮名遣い。
いとはるかなる所にて見けり。 とてもはるかなところで見たのであった。  
その返り事に、 その返事に、  
     
あひ見むと あなたにお逢いしたいと  
思ふ心は 思うわたしの心は、  
松浦なる 松浦に鎮座する 【松浦なる鏡の神】-肥前国東松浦郡に鎮座する鏡神社。
鏡の神や 鏡の神が  
空に見るらむ 空からお見通しくださることでしょう 【空に見るらむ】-空で見ていることだろう、の意。
     

参考異本=後世の二次資料

*「あさからずたのめたるをとこの心ならず肥前国へまかりて侍りけるが、たよりにつけて文おこせて侍りける返事に 紫式部
  あひみんと思ふ心はまつらなるかがみの神や空にしるらん」(吉田兼右筆本「新千載集」恋二 一二三一)
*「かがみの神 肥前 家集 紫式部
  あひ見んとおもふ心はまつらなるかがみの神やそらにしるらん」(静嘉堂文庫本「夫木和歌抄」雑十六 神祇 一六〇二八)