徒然草174段 小鷹によき犬:原文

小野小町が事 徒然草
第五部
174段
小鷹によき犬
世には心得ぬ

 
 小鷹によき犬、大鷹に使ひぬれば、小鷹にわろうなるといふ。
大に付き小を捨つる理、まことにしかなり。
人事多かる中に、道を楽しぶより気味深きはなし。
これ、まことの大事なり。
一度道を聞きて、これに志さん人、いづれのわざか廃れざらん。
何事をか営まん。
愚かなる人といふとも、賢き犬の心に劣らざらんや。