枕草子224段 いみじう暑きころ

五月ばかり 枕草子
中巻下
224段
いみじう暑きころ
五月四日の

(旧)大系:224段
新大系:207段、新編全集:208段
(以上全て三巻本系列本。しかし後二本の構成は2/3が一致せず混乱を招くので、以後最も索引性に優れる三巻本理論の根本たる『(旧)大系』に準拠すべきと思う)
(旧)全集=能因本:205段
 


 
 いみじう暑きころ、夕すずみといふほど、物のさまなどもおぼめかしきに、男車の前駆追ふはいふべきにもあらず、ただの人も、後の簾あげて、二人も、一人も、乗りて走らせ行くこそすずしげなれ。まして、琵琶かい調べ、笛の音など聞こえたるは、過ぎて往ぬるもくちをし。さやうなるは、牛の鞦の香の、なほあやしう、嗅ぎ知らぬものなれど、をかしきこそもの狂ほしけれ。
 

 いと暗う闇なるに、前にともしたる松の煙の香の、車のうちにかかへたるもをかし。
 
 

五月ばかり 枕草子
中巻下
224段
いみじう暑きころ
五月四日の