紫式部集46 春の夜の:原文対訳・逐語分析

45ことわりや 紫式部集
第四部
夫の死

46春の夜の
47さ雄鹿の
原文
(実践女子大本)
現代語訳
(渋谷栄一)
注釈
【渋谷栄一】
絵に、  絵に、  
梅の花見るとて、 梅の花を見ようとして、  
女、妻戸押し開けて、 女が妻戸を押し開けて、 【押し開けて】-実践本「をす」は定家の仮名遣い。
二三人ゐたるに、 二三人座っているが、  
みな人びと寝たるけしき 他の人々は皆寝ている様子を  
描いたるに、 描いている中に、  
いとさだ過ぎたるおもとの、 たいそう年取った身分ある女房が、 【いとさだ過ぎたるおもと】-単に年取った女房の意でなく、身分の高い女房。
つらづゑついて 頬杖をついて  
眺めたるかたあるところ、 もの思いに耽っている姿が描いてあるところ、  
     
春の夜の 春の夜の  
闇の惑ひに 闇に〈惑って〉  
色ならぬ 梅の花の色は見えないが 【色ならぬ】-若さはないが、の意味が込められている。
心に花の 心のうちに花の  
香をぞ染めつる 香を染めたことである