古事記 倭建命の系譜~原文対訳

大御葬の歌 古事記
中巻⑤
12代 景行天皇
倭建命の系譜
景行天皇陵
原文 書き下し
(武田祐吉)
現代語訳
(武田祐吉)

六人の子

     
此倭建命。  この倭建の命、  このヤマトタケルの命が、

伊玖米天皇之女。
布多遲能伊理毘賣命。
〈自布下八字以音〉
伊玖米いくめの天皇が女、
布多遲ふたぢの
伊理毘賣いりびめの命に
娶ひて
垂仁天皇の女、
フタヂノイリ姫の命と
結婚して
生御子。
帶中津日子命。
〈一柱〉
生みませる御子みこ
帶中津日子
たらしなかつひこの命一柱。
お生みになつた御子は、
タラシナカツ彦の命お一方です。
     
又娶。
其入海
弟橘比賣命。
またその海に入りましし
弟橘おとたちばな比賣の命に
娶ひて
またかの海におはいりになつた
オトタチバナ姫の命と
結婚して
生御子。
若建王。
〈一柱〉
生みませる御子、
若建わかたけるの王
一柱。
お生みになつた御子は
ワカタケルの王
お一方です。
     
又娶。
近淡海之
安國造之祖。
意富多牟和氣之女。
布多遲比賣。
また
近ちかつ淡海あふみの
安やすの國の造の祖、
意富多牟和氣
おほたむわけが女、
布多遲ふたぢ比賣に娶ひて、
また近江のヤスの國の造の祖先の
オホタムワケの女の
フタヂ姫と結婚して
生御子。 生みませる御子、 お生みになつた御子は
稻依別王。
〈一柱〉
稻依別いなよりわけの王
一柱。
イナヨリワケの王お一方です。
     
又娶。
吉備臣建日子之妹。
大吉備建比賣。
また吉備きびの臣
建日子たけひこが妹、
大吉備おほきびの
建たけ比賣に娶ひて、
また吉備の臣
タケ彦の妹の
大吉備のタケ姫と
結婚して
生御子。
建貝兒王。
〈一柱〉
生みませる御子、
建貝兒たけかひこの王
一柱。
お生みになつた御子は、
タケカヒコの王お一方です。
     
又娶。
山代之
玖玖麻毛理比賣。
また山代の
玖玖麻毛理
くくまもり比賣に娶ひて
また山代やましろの
ククマモリ姫と結婚して
生御子。
足鏡別王。
〈一柱〉
生みませる御子、
足鏡別あしかがみわけの王
一柱。
お生みになつた御子は
アシカガミワケの王
お一方です。
     
又一妻之子。
息長田別王。
またある妾みめの子みこ、
息長田別
おきながたわけの王。
またある妻の子は、
オキナガタワケの王です。
     
凡是
倭建命之御子等。
并六柱。
およそこの
倭建の命の御子たち、
并はせて六柱。
すべてこの
ヤマトタケルの命の御子たちは
合わせて六人ありました。
     

仲哀天皇

     
故帶中津日子命者。
治天下也。
かれ帶中津日子
たらしなかつひこの命は、
天の下治らしめしき。
 それでタラシナカツ彦の命は
天下をお治めなさいました。
     

傍系の系譜

     
次稻依別王者。 次に稻依別の王は、 次にイナヨリワケの王は、
〈犬上君。 犬上の君、 犬上の君・
建部君等之祖〉 建部の君等が祖なり。 建部の君等の祖先です。
     
次建貝兒王者。 次に建貝兒の王は、 次にタケカヒコの王は、
〈讚岐綾君。 讚岐の綾の君、 讚岐の綾の君・
伊勢之別。 伊勢の別、 伊勢の別・
登袁之別。 登袁の別、 登袁とおの別・
麻佐首。 麻佐の首、 麻佐の首おびと・
宮首之別等之祖〉 宮の首の別等が祖なり。 宮の首の別等の祖先です。
     
足鏡別王者。 足鏡別の王は アシカガミワケの王は、
〈鎌倉之別。 鎌倉の別、 鎌倉の別・
小津。石代之別。 小津の石代の別、 小津の石代いわしろの別・
漁田之別之祖也〉 漁田すなきだの別が祖なり。 漁田すなきだの別の祖先です。
     

息長田別王之子。
次に息長田別
おきながたわけの王の子みこ、
次にオキナガタワケの王の子、
杙俣長日子王。 杙俣長日子くひまたながひこの王。 クヒマタナガ彦の王、
此王之子。 この王の子、 この王の子、
飯野眞黒比賣命。 飯野いひのの
眞黒まぐろ比賣の命、
イヒノノ
マクロ姫の命・
次息長
眞若中比賣。
次に息長眞若中
おきながまわかなかつ比賣、
オキナガ
マワカナカツ姫・
次弟比賣。 次に弟比賣おとひめ 弟姫の
〈三柱〉 三柱。 お三方です。
     

若建の系譜

     
故上云若建王。 かれ上にいへる若建の王、 そこで上に出たワカタケルの王が、
娶飯野眞黒比賣。 飯野の眞黒比賣に娶ひて イヒノノマクロ姫と結婚して
生子。
須賣伊呂大中日子王。
〈自須至呂以音〉
生みませる子、
須賣伊呂大中
すめいろおほなかつ日子ひこの王。
生んだ子は
スメイロオホナカツ彦の王、
此王。娶
淡海之柴野入杵之女。
柴野比賣。
この王、
淡海あふみの
柴野入杵しばのいりきが女、
柴野比賣に娶ひて
この王が、
近江の
シバノイリキの女の
シバノ姫と結婚して
生子。
迦具漏比賣命。
生みませる子、
迦具漏かぐろ比賣の命。
生んだ子は
カグロ姫の命です。
故大帶日子天皇。

此迦具漏比賣命。
かれ大帶日子
おほたらしひこの天皇、
この迦具漏比賣の命に
娶ひて
オホタラシ彦の天皇が
このカグロ姫の命と
結婚して
生子。
大江王。〈一柱〉
生みませる子、
大江おほえの王一柱。
お生みになつた御子は
オホエの王のお一方です。
此王。
娶庶妹銀王。
この王、
庶妹ままいも
銀しろがねの王に娶ひて
この王が
庶妹シロガネの王と結婚して
生子。 生みませる子、 生んだ子は
大名方王。 大名方おほながたの王、 オホナガタの王と
次大中比賣命。 次に大中おほなかつ比賣の命二柱。 オホナカツ姫のお二方です。
〈二柱〉    
故此之
大中比賣命者。
かれこの
大中おほなかつ比賣の命は、
そこでこの
オホナカツ姫の命は、
香坂王。 香坂かごさかの王、 カゴサカの王・
忍熊王之御祖也。 忍熊おしくまの王の御祖なり。 オシクマの王の母君です。
大御葬の歌 古事記
中巻⑤
12代 景行天皇
倭建命の系譜
景行天皇陵