奥の細道 殺生石・遊行柳:原文対照

雲巌寺 奥の細道
殺生石・遊行柳
白河の関


『おくのほそ道』
素龍清書原本 校訂
『新釈奥の細道』
   これより殺生石に行く。 是より殺生石に行く
  館代より馬にて送らる。 舘代より馬にて送らる
  この口付の男 此口付のおとこ
  「短冊得させよ」と乞ふ。 短尺得させよと乞ふ
  やさしきことを望み侍るものかなと、 やさしき事を望み侍るものかなと
     

11
 野を横に 馬引き向けよ ほととぎす  野を橫に 馬引むけよ 郭公
     
   殺生石は温泉の出づる山陰にあり。 殺生石は溫泉の出る山陰にあり
  石の毒気いまだ滅びず、 石の毒氣いまだほろびす
  蜂、蝶のたぐひ、 蜂蝶のたぐひ
  真砂の色の見えぬほど重なり死す。 眞砂の色の見えぬほどかさなり死す
  また、清水流るるの柳は、 亦淸水ながるゝの一本なかるゝとのトアリ柳は
  蘆野の里にありて、田の畔に残る。 蘆野の里に有て田の畔にのこす
     
  この所の郡守戸部某の、 此所の郡守戶部某の
  「この柳見せばや」など、 此柳みせばやなど
  をりをりに宣ひ聞こえ給ふを、 折〳〵にの給ひ聞へ給ふを
  いづくのほどにやと思ひしを、 いづくの程にやと思ひしを
  今日この柳の陰にこそ立ち寄り侍りつれ。 今日此柳のかげにこそ立より侍りけれけ一本つトアリ
     

12
 田一枚 植ゑて立ち去る 柳かな  田一枚 うへて立さる 柳かな
雲巌寺 奥の細道
殺生石・遊行柳
白河の関