源氏物語 花宴:巻別和歌8首・逐語分析

紅葉賀 源氏物語
和歌一覧
各巻別内訳
8帖 花宴

 
 源氏物語・花宴(はなのえん)巻の和歌8首を抜粋一覧化し、現代語訳と歌い手を併記、原文対訳の該当部と通じさせた。

 

 内訳:4(源氏)、2(朧月夜=弘徽殿女御の妹=須磨明石流浪のきっかけ)、1×2(藤壺、右大臣)※最初最後
 

花宴・和歌の対応の程度と歌数
和歌間の文字数
即答 4首  40字未満
応答 0  40~100字未満
対応 0  ~400~1000字+対応関係文言
単体 4首  独立・直近非対応

※分類について和歌一覧・総論部分参照。

 

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 上下の句に分割したバージョン。見やすさに応じて。
 なお、付属の訳はあくまで通説的理解の一例なので、訳が原文から離れたり対応していない場合、より精度の高い訳を検討されたい。
 


  原文
(定家本校訂)
現代語訳
(渋谷栄一)
101
おほかたに
花の姿を
見ましかば
つゆも心の
おかれましやは
〔藤壺〕何の関係もなく
花のように美しいお姿を
拝するのであったなら
少しも気兼ねなど
いらなかろうものを
102
贈:
深き夜の
あはれを知るも
入る月の
おぼろけならぬ
契りとぞ思ふ
〔源氏→朧月夜〕趣深い春の夜更けの
情趣をご存知でいられるのも

前世からの浅からぬ
御縁があったものと存じます
103
憂き身世に
やがて消えなば
尋ねても
草のをば
問はじとや思ふ
〔朧月夜〕不幸せな身のまま名前を明かさないで
この世から死んでしまったなら
野末の草の原まで
尋ねて
来ては下さらないのかと思います
104
いづれぞと
露のやどりを
分かむまに
小笹が
風もこそ吹け
〔源氏〕どなたであろうかと
家を探しているうちに
世間に噂が立って
だめになってしまうといけないと思いまして
105
贈:
世に知らぬ
心地こそすれ
有明の
月のゆくへを
空にまがへて
〔源氏→朧月夜〕今までに味わったことのない
気がする
有明の
月の行方を
途中で見失ってしまって
106
贈:
わが宿の
花しなべての
色ならば
何かはさらに
君を待たまし
〔右大臣→源氏〕わたしの邸の
藤の花が世間一般の
色をしているのなら
どうして
あなたをお待ち致しましょうか
107

いる
さの山に
惑ふかな
ほの見し
影や見ゆると
〔源氏〕
月の入るいるさの山の周辺で
うろうろと迷っています
かすかに見かけた有明の月を
また見ることができようかと
108
いる
方ならませば
張の
なき空に
迷はましやは
〔朧月夜〕本当に深くご執心で
いらっしゃれば
たとえ
月が出ていなくても
迷うことがありましょうか