源氏物語 柏木:巻別和歌11首・逐語分析

若菜下 源氏物語
和歌一覧
各巻別内訳
36帖 柏木
横笛

 
 源氏物語・柏木巻の和歌11首を抜粋一覧化し、現代語訳と歌い手を併記、原文対訳の該当部と通じさせた。

 柏木個人の和歌一覧はリンク先参照。

 

 内訳:3(夕霧)、2(柏木)、1×6(女三宮、源氏、一条御息所=柏木妻の母、大臣=かつての頭中将=柏木父、弁の君=柏木弟、※簾内女房×落葉宮:柏木妻後に夕霧妻)※最初最後
 

柏木・和歌の対応の程度と歌数
和歌間の文字数
即答 5首  40字未満
応答 2首  40~100字未満
対応 3首  ~400~1000字+対応関係文言
単体 1首  単一独詠・直近非対応

※分類について和歌一覧・総論部分参照。

 

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 上下の句に分割したバージョン。見やすさに応じて。

 なお、付属の訳はあくまで通説的理解の一例なので、訳が原文から離れたり対応していない場合、より精度の高い訳を検討されたい。
 


  原文
(定家本校訂)
現代語訳
(渋谷栄一)
501
今はとて
燃えむ
むすぼほれ
絶えぬ思ひ
なほや残らむ
〔柏木〕もうこれが
最期と燃えるわたしの荼毘の煙も
くすぶって空に上らず
あなたへの諦め切れない思いが
なおもこの世に残ることでしょう
502
立ち添ひて
消えやしなまし
憂きことを
思ひ乱るる
比べに
〔女三宮〕わたしも一緒に
煙となって消えてしまいたいほどです
辛いことを
思い嘆く
悩みの競いに
503
行方なき
空の
なりぬとも
思ふあたりを
立ちは離れじ
〔柏木〕行く方もない
空の煙と
なったとしても
思うお方のあたりは
離れまいと思う
504
贈:
誰が世にか
種は蒔きしと
人問はば
いかが岩根の
松は答へむ
〔源氏→女三宮〕いったい誰が
種を蒔いたのでしょうと
人が尋ねたら
誰と答えてよいのでしょう、
岩根の松は
505
時しあれば
変はらぬ色に
匂ひけり
片枝枯れにし
宿の桜も
〔夕霧〕季節が廻って来たので
変わらない色に
咲きました
片方の枝は枯れてしまった
この桜の木にも
506
この春は
柳の芽にぞ
玉はぬく
咲き散る花の
行方知らねば
〔一条御息所:柏木妻の母〕今年の春は
柳の芽に
露の玉が貫いているように【?】泣いております
咲いて散る桜の花の
行く方も知りませんので
507
の下の
雫に濡れて
さかさまに
霞の衣
着た
る春かな
〔大臣:頭中将:柏木父〕木の下の
雫に濡れて
逆様に
親が子の喪に
服している春です
508
亡き人も
思はざりけむ
うち捨てて
夕べの
着たれとは
〔夕霧〕亡くなった人も
思わなかったことでしょう
親に先立って
父君に喪服を
着て戴こうとは
509
恨めしや
霞の衣
誰れ着よ
春よりさきに
花の散りけむ
〔弁の君:柏木弟〕恨めしいことよ、
墨染の衣を
誰が着ようと思って
春より先に
花は散ってしまったのでしょう
510
ことならば
馴らしの枝に
ならさなむ
葉守の神
許しありきと
〔夕霧→?:一条宮の簾内で応接する女房達〕同じことならば
この連理の枝のように
親しくして下さい
葉守の神の
亡き方のお許があったのですからと
511
柏木
葉守の神
まさずとも
人ならすべき
宿の梢か
〔簾内の女房達「少将の君といふ人をして」 ×落葉宮:旧大系・全集,御息所の歌ではあるまい:新大系〕
柏木に
葉守の神は
いらっしゃらなくても
みだりに人を
近づけてよい梢でしょうか