枕草子114段 卯月のつごもりがたに

原は 枕草子
上巻下
114段
卯月の
つねより

(旧)大系:114段
新大系:110段、新編全集:110段
(以上全て三巻本系列本。しかし後二本の構成は2/3が一致せず、混乱を招くので、三巻本理論の根本たる『(旧)大系』に準拠すべきと思う)
(旧)全集=能因本:116段
 


 
 卯月のつごもりがたに、初瀬にまうでて、淀のわたりといふものをせしかば、舟に車をかきすゑて、菖蒲、菰などの末のみじかく見えしをとらせたれば、いとながかりけり。菰積みたる舟のありくこそ、いみじうをかしかりしか。「高瀬の淀に」とは、これをよみけるなめりと見えて。
 三日かへりしに、雨のすこし降りしほど、菖蒲刈るとて、笠のいとちひさき着つつ、脛いとたかき男の童などのあるも、屏風の絵に似ていとをかし。