徒然草178段 ある所の侍ども:原文

鎌倉中書王 徒然草
第五部
178段
ある所の侍
入宋の沙門

 
 ある所の侍ども、内侍所の御神楽を見て、人に語るとて、「宝剣をばその人ぞ持ち給ひつる」など言ふを聞きて、内なる女房の中に、「別殿の行幸には、昼御座の御剣にてこそあれ」と忍びやかに言ひたりし、心にくかりき。
その人、古き典侍なりけるとかや。