紫式部集33 東風に:原文対訳・逐語分析

原文
(実践女子大本)
現代語訳
(渋谷栄一)
注釈
【渋谷栄一】
すかされて、

当てが外れて〉

×気持ちがなだめられて

【すかされて】-なだめられて。式部の歌が夫婦仲の永続を願う内容であったことから、宣孝は気持ちがなだめられた

〈わたしの言葉になだめすかされて、とするのが通説(新大系・集成)だが、すかされ(かわされ・放っておかれ)の素直な語義を真逆に反転させた補いで、前段同様、男本位の恣意的解釈を重ねた曲解。通説解釈は全体の文脈とも全く整合しない〉

いと暗うなりたるに、 たいそう暗くなったころに  
おこせたる、 寄越した歌、  
     
東風に 春の東風で 【東風に解くる】-こちかぜ。「孟春之月、東風解氷」(礼記・月令)を踏まえた表現。
解くるばかりを 解けるくらいの氷ならば  
底見ゆる    
石間の水は 石間の水は 【石間の水】-石と石の間を流れる水、浅い水。相手作者の浅い心を譬喩。
絶えば絶えなむ 絶えるなら絶えればいいのだ 【絶えば絶えなむ】-ヤ下二「絶え」未然形+接続助詞「ば」順接の仮定条件、ヤ下二「絶え」未然形+終助詞「なむ」願望の意。絶えてしまう仲ならば、絶えてしまってもよい。