平家物語 巻第三 燈炉之沙汰:概要と原文

無文 平家物語
巻第三
燈炉之沙汰
とうろうのさた
異:燈籠
金渡

〔概要〕
 
 亡くなった平重盛(清盛の長男)の逸話の続き。東山に四十八間の阿弥陀堂を建立、燈籠の大臣と呼ばれた。(Wikipedia『平家物語の内容』に加筆)

 


 
 またこの大臣は(滅罪生善の志深うおはしければ)当来の浮沈を歎き、六八弘誓の願に準へて、東山の麓に、六八四十八間に精舎をたて、一間に一つづつ、四十八の燈籠を懸けられたりければ、九品の台、目の前に輝き、光耀鸞鏡を琢いて、浄土の砌に臨むかと疑はれ、毎月十四日十五日を定めて大念仏ありしに、当家他家の人々のもとより、色白うみめ好く壮んなる女房を請じて、一間に六人づつ、四十八間に二百八十八人、尼衆と定め、大臣行道に交はり、かの両日が間は、一心不乱の称名の声退転なし。
 まことに光明引摂の悲願も、この所に影向を垂れ、摂取不捨光も、かの大臣を照らし給ふらんとぞ見えし。
 十五日の日中を結願として、大臣西に向かひ、手を合はせ、「九品安養教主弥陀善逝、三界六道の衆生をあまねく済度し給へ」と、回向発願し給へば、見る人慈悲心をおこし、聞く者、感涙をぞ催しける。それよりしてぞ、この大臣をば燈籠の大臣とは申しける。
 

無文 平家物語
巻第三
燈炉之沙汰
とうろうのさた
異:燈籠
金渡