徒然草179段 入宋の沙門:原文

ある所の侍 徒然草
第五部
179段
入宋の沙門
さぎちやう

 
 入宋の沙門、道眼上人、一切経を持来して、六波羅のあたり、やけ野といふ所に安置して、殊に首楞厳経を講じて、那蘭陀寺と号す。
 

 その聖の申されしは、「那蘭陀寺は、大門北向きなりと、江師の説とて言ひ伝へたれど、西域伝、法顕伝などにも見えず、さらに所見なし。江師はいかなる才学にてか申されけん、おぼつかなし。唐土の西明寺は、北向き勿論なり」と申しき。