古事記~禊祓② 原文対訳

禊祓① 古事記
上巻 第一部
イザナギとイザナミ
禊祓②
三貴子①
原文 書き下し
(武田祐吉)
現代語訳
(武田祐吉)
於是詔之  ここに詔りたまはく、 そこで、
上瀨者
瀨速。
「上かみつ瀬せは
瀬速し、
「上流の方は
瀬が速い、
下瀨者
瀨弱而。
下しもつ瀬は
弱し」と詔のりたまひて、
下流かりゆうの方は
瀬が弱い」と仰せられて、
初於
中瀨
随迦豆伎而。
初めて
中なかつ瀬に
降おり潛かづきて、
眞中の瀬に
下りて
滌時。 滌ぎたまふ時に、 水中に
身をお洗いになつた時に
所成坐神名 成りませる神の名は、 あらわれた神は、
八十禍津日神。
〈訓禍云摩賀。
下效此〉
八十禍津日
やそまがつびの神。
ヤソマガツヒの神と
次大禍津日神。 次に大禍津日
おほまがつひの神。
オホマガツヒの神とでした。
此二神者。 この二神ふたはしらは、 この二神は、
所到
其穢繁國
之時。
かの穢き
繁しき國に
到りたまひし時の、
あの穢い國に
おいでになつた時の
因汚垢而
所成神之者也。
汚垢けがれによりて
成りませる神なり。
汚垢けがれによつて
あらわれた神です。
     

爲直其禍而
所成神名
次に
その禍まがを直さむとして
成りませる神の名は、
次に
その禍わざわいを直なおそうとして
あらわれた神は、
神直毘神。
〈毘字以音
下效此〉
神直毘
かむなほびの神。
カムナホビの神と

大直毘神。
次に
大直毘
おほなほびの神。
オホナホビの神と

伊豆能賣神
〈并三神也。
伊以下
四字以音〉
次に
伊豆能賣
いづのめ。
イヅノメです。
     
次於
水底
滌時。
所成神名。
次に
水底みなそこに
滌ぎたまふ時に
成りませる神の名は、
次に
水底で
お洗いになつた時に
あらわれた神は
底津綿〈上〉津見神。 底津綿津見
そこつわたつみの神。
ソコツワタツミの神と
次底筒之男命。 次に底筒
そこづつの男をの命。
ソコヅツノヲの命、
     
於中滌時。
所成神名。
中に滌ぎたまふ時に
成りませる神の名は、
海中でお洗いになつた時に
あらわれた神は
中津綿〈上〉津見神。 中津綿津見
なかつわたつみの神。
ナカツワタツミの神と
次中筒之男命。 次に中筒
なかづつの男をの命。
ナカヅツノヲの命、
     
於水上滌時。
所成神名。
水の上に滌ぎたまふ時に
成りませる神の名は、
水面でお洗いになつた時に
あらわれた神は
上津綿〈上〉津見神。
〈訓上云宇閇〉
上津綿津見
うはつわたつみの神。
ウハツワタツミの神と
次上筒之男命。 次に上筒
うはづつの男をの命。
ウハヅツノヲの命です。
     
此三柱
綿津見神者。
この三柱の
綿津見の神は、
このうち御三方
おさんかたのワタツミの神は
阿曇連等之
祖神以
伊都久神也。
〈伊以下
三字以音
下效此〉
阿曇あづみの
連むらじ等が
祖神おやがみと
齋いつく神なり。
安曇氏
あずみうじの
祖先神
そせんじんです。

阿曇連等者。
かれ
阿曇の連等は、
よつて
安曇の連むらじたちは、
其綿津見神之子。 その綿津見の神の子 そのワタツミの神の子、
宇都志日金拆命之
子孫也。
〈宇都志三字以音〉
宇都志日金拆
うつしひがなさくの命の
子孫のちなり。
ウツシヒガナサクの命の
子孫です。
     
その また、
底筒之男命 底筒の男の命、 ソコヅツノヲの命・
中筒之男命 中筒の男の命、 ナカヅツノヲの命・
上筒之男命
三柱神者。
上筒の男の命
三柱の神は、
ウハヅツノヲの命
御三方おさんかたは
墨江之
三前大神也。
墨すみの江えの
三前の大神なり。
住吉神社
すみよしじんじやの
三座の神樣であります。
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