枕草子163段 昔おぼえて不用なるもの

弘徽殿 枕草子
中巻中
163段
昔おぼえて
たのもしげ

(旧)大系:163段
新大系:156段、新編全集:157段
(以上全て三巻本系列本。しかし後二本の構成は2/3が一致せず混乱を招くので、以後、三巻本理論の根本たる『(旧)大系』に準拠すべきと思う)
(旧)全集=能因本:167段
 


 
 昔おぼえて不用なるもの 繧繝縁の畳のふし出で来たる。唐絵の屏風の黒み、おもてそこなはれたる。絵師の目暗き。七八尺の鬘のあかくなりたる。葡萄染めの織物、灰かへりたる。色好みの老いくづほれたる。おもしろき家の木立焼け失せたる。池などはさながらあれど、浮き草、水草など茂りて。
 
 

弘徽殿 枕草子
中巻中
163段
昔おぼえて
たのもしげ