古今和歌集 巻二十 大歌所:歌の配置・コメント付

巻十九
雑体
古今和歌集
巻二十
大歌所御歌
巻末
墨滅歌
目次
  1069
無記
1070
無記
1071
無記
1072
無記
1073
無記
1074
無記
1075
無記
1076
無記
1077
無記
1078
無記
1079
無記
1080
無記
1081
無記
1082
無記
1083
無記
1084
無記
1085
無記
1086
黒主
1087
無記
1088
無記
1089
無記
1090
無記
1091
無記
1092
無記
1093
無記
1094
無記
1095
無記
1096
無記
1097
無記
1098
無記
1099
無記
1100
敏行
 
※二人以外全て無記名。大歌所(歌を管理した役所)が収集した歌とのこと。
 三部に分かれ、-1073(大歌所歌)、-1086(神遊び歌)、-1100(東歌)。
全体に神がかり、古い調子である。序で強調した古の心でしめるということだろう。
 この神は、天皇ではなく文字通りの意味。だから古典の歌は神事。今の物が時がたてば古典になるのではなく、古典の継承が古典になる。
 最後に二人の人を入れたのは、どういう意図だろうか。黒主は六歌仙でおまけで挿入として、敏行を特別視していることは全体の配置からも間違いない。つまり、巻先頭連続は、文屋・小町・敏行(秋下・恋二・物名)であり、敏行は恋三の業平の連続を崩している。したがって、ここでは格上の残り二人を暗示している、と見れなくもない。
 そしてその二人は一緒に無名で沢山歌を残し、歌の神というに相応しい(和歌三神の系譜)。だから小町は人格不詳ですぐ秋田に行くほどなのに、女性で先端を行き、突出して多く歌を残した。この時代、名が姓名で分かれて呼ばれる女性も小町のみ。

 
 

巻二十:大歌所歌

   
   1069
詞書 大歌所御歌:おほなほひのうた/日本紀には、つかへまつらめよろつよまてに
作者 無記(よみ人しらす)
原文 あたらしき 年の始に かくしこそ
 ちとせをかねて たのしきをつめ
かな あたらしき としのはしめに かくしこそ
 ちとせをかねて たのしきをつめ
   
  1070
詞書 大歌所御歌:ふるきやまとまひのうた
作者 無記(よみ人しらす)
原文 しもとゆふ かつらき山に ふる雪の
 まなく時なく おもほゆるかな
かな しもとゆふ かつらきやまに ふるゆきの
 まなくときなく おもほゆるかな
   
  1071
詞書 大歌所御歌:あふみふり
作者 無記(よみ人しらす)
原文 近江より あさたちくれは うねののに
 たつそなくなる あけぬこのよは
かな あふみより あさたちくれは うねののに
 たつそなくなる あけぬこのよは
   
  1072
詞書 大歌所御歌:みつくきふり
作者 無記(よみ人しらす)
原文 水くきの をかのやかたに いもとあれと
 ねてのあさけの しものふりはも
かな みつくきの をかのやかたに いもとあれと
 ねてのあさけの しものふりはも
   
  1073
詞書 大歌所御歌:しはつ山ふり
作者 無記(よみ人しらす)
原文 しはつ山 うちいてて見れは かさゆひの
 しまこきかくる たななしをふね
かな しはつやま うちいててみれは かさゆひの
 しまこきかくる たななしをふね
   
  1074
詞書 神あそひのうた:とりもののうた
作者 無記(よみ人しらす)
原文 神かきの みむろの山の さかきはは
 神のみまへに しけりあひにけり
かな かみかきの みむろのやまの さかきはは
 かみのみまへに しけりあひにけり
   
  1075
詞書 神あそひのうた:とりもののうた
作者 無記(よみ人しらす)
原文 しもやたひ おけとかれせぬ さかきはの
 たちさかゆへき 神のきねかも
かな しもやたひ おけとかれせぬ さかきはの
 たちさかゆへき かみのきねかも
   
  1076
詞書 神あそひのうた:とりもののうた
作者 無記(よみ人しらす)
原文 まきもくの あなしの山の 山人と
 人も見るかに 山かつらせよ
かな まきもくの あなしのやまの やまひとと
 ひともみるかに やまかつらせよ
   
  1077
詞書 神あそひのうた:とりもののうた
作者 無記(よみ人しらす)
原文 み山には あられふるらし とやまなる
 まさきのかつら いろつきにけり
かな みやまには あられふるらし とやまなる
 まさきのかつら いろつきにけり
   
  1078
詞書 神あそひのうた:とりもののうた
作者 無記(よみ人しらす)
原文 みちのくの あたちのまゆみ わかひかは
 すゑさへよりこ しのひしのひに
かな みちのくの あたちのまゆみ わかひかは
 すゑさへよりこ しのひしのひに
   
  1079
詞書 神あそひのうた:とりもののうた
作者 無記(よみ人しらす)
原文 わかかとの いたゐのし水 さととほみ
 人しくまねは みくさおひにけり
かな わかかとの いたゐのしみつ さととほみ
 ひとしくまねは みくさおひにけり
   
  1080
詞書 神あそひのうた:ひるめのうた
作者 無記(よみ人しらす)
原文 ささのくま ひのくま河に こまとめて
 しはし水かへ かけをたに見む
かな ささのくま ひのくまかはに こまとめて
 しはしみつかへ かけをたにみむ
   
  1081
詞書 神あそひのうた:かへしもののうた
作者 無記(よみ人しらす)
原文 あをやきを かたいとによりて 鶯の
 ぬふてふ笠は 梅の花かさ
かな あをやきを かたいとによりて うくひすの
 ぬふてふかさは うめのはなかさ
   
  1082
詞書 神あそひのうた:かへしもののうた
/この歌は、承和の御へのきひのくにの歌
作者 無記(よみ人しらす)
原文 まかねふく きひの中山 おひにせる
 ほそたに河の おとのさやけさ
かな まかねふく きひのなかやま おひにせる
 ほそたにかはの おとのさやけさ
   
  1083
詞書 神あそひのうた:かへしもののうた
/これは、みつのをの御への
みまさかのくにのうた
作者 無記(よみ人しらす)
原文 美作や くめのさら山 さらさらに
 わかなはたてし よろつよまてに
かな みまさかや くめのさらやま さらさらに
 わかなはたてし よろつよまてに
   
  1084
詞書 神あそひのうた:かへしもののうた
/これは、元慶の御へのみののうた
作者 無記(よみ人しらす)
原文 みののくに 関のふち河 たえすして
 君につかへむ よろつよまてに
かな みののくに せきのふちかは たえすして
 きみにつかへむ よろつよまてに
   
  1085
詞書 神あそひのうた:かへしもののうた
/これは、仁和の御へのいせのくにの歌
作者 無記(よみ人しらす)
原文 きみか世は 限もあらし なかはまの
 まさこのかすは よみつくすとも
かな きみかよは かきりもあらし なかはまの
 まさこのかすは よみつくすとも
   
  1086
詞書 神あそひのうた:かへしもののうた
/これは、今上の御へのあふみのうた
作者 大伴くろぬし(大伴黒主)
原文 近江のや かかみの山を たてたれは
 かねてそ見ゆる 君かちとせは
かな あふみのや かかみのやまを たてたれは
 かねてそみゆる きみかちとせは
   
  1087
詞書 東歌:みちのくうた
作者 無記(よみ人しらす)
原文 あふくまに 霧立ちくもり あけぬとも
 君をはやらし まてはすへなし
かな あふくまに きりたちくもり あけぬとも
 きみをはやらし まてはすへなし
   
  1088
詞書 東歌:みちのくうた
作者 無記(よみ人しらす)
原文 みちのくは いつくはあれと しほかまの
 浦こく舟の つなてかなしも
かな みちのくは いつくはあれと しほかまの
 うらこくふねの つなてかなしも
   
  1089
詞書 東歌:みちのくうた
作者 無記(よみ人しらす)
原文 わかせこを 宮こにやりて しほかまの
 まかきのしまの 松そこひしき
かな わかせこを みやこにやりて しほかまの
 まかきのしまの まつそこひしき
   
  1090
詞書 東歌:みちのくうた
作者 無記(よみ人しらす)
原文 をくろさき みつのこしまの 人ならは
 宮このつとに いさといはましを
かな をくろさき みつのこしまの ひとならは
 みやこのつとに いさといはましを
   
  1091
詞書 東歌:みちのくうた
作者 無記(よみ人しらす)
原文 みさふらひ みかさと申せ 宮木のの
 このしたつゆは あめにまされり
かな みさふらひ みかさとまうせ みやきのの
 このしたつゆは あめにまされり
   
  1092
詞書 東歌:みちのくうた
作者 無記(よみ人しらす)
原文 もかみ河 のほれはくたる いな舟の
 いなにはあらす この月はかり
かな もかみかは のほれはくたる いなふねの
 いなにはあらす このつきはかり
   
  1093
詞書 東歌:みちのくうた
作者 無記(よみ人しらす)
原文 君をおきて あたし心を わかもたは
 すゑの松山 浪もこえなむ
かな きみをおきて あたしこころを わかもたは
 すゑのまつやま なみもこえなむ
   
  1094
詞書 東歌:さかみうた
作者 無記(よみ人しらす)
原文 こよろきの いそたちならし いそなつむ
 めさしぬらすな おきにをれ浪
かな こよろきの いそたちならし いそなつむ
 めさしぬらすな おきにをれなみ
   
  1095
詞書 東歌:ひたちうた
作者 無記(よみ人しらす)
原文 つくはねの このもかのもに 影はあれと
 君かみかけに ますかけはなし
かな つくはねの このもかのもに かけはあれと
 きみかみかけに ますかけはなし
   
  1096
詞書 東歌:ひたちうた
作者 無記(よみ人しらす)
原文 つくはねの 峰のもみちは おちつもり
 しるもしらぬも なへてかなしも
かな つくはねの みねのもみちは おちつもり
 しるもしらぬも なへてかなしも
   
  1097
詞書 東歌:かひうた
作者 無記(よみ人しらす)
原文 かひかねを さやにも見しか けけれなく
 よこほりふせる さやの中山
かな かひかねを さやにもみしか けけれなく
 よこほりふせる さやのなかやま
   
  1098
詞書 東歌:かひうた
作者 無記(よみ人しらす)
原文 かひかねを ねこし山こし 吹く風を
 人にもかもや 事つてやらむ
かな かひかねを ねこしやまこし ふくかせを
 ひとにもかもや ことつてやらむ
   
  1099
詞書 東歌:伊勢うた
作者 無記(よみ人しらす)
原文 をふのうらに かたえさしおほひ なるなしの
 なりもならすも ねてかたらはむ
かな をふのうらに かたえさしおほひ なるなしの
 なりもならすも ねてかたらはむ
   
  1100
詞書 東歌:冬の賀茂のまつりのうた
作者 藤原敏行朝臣
原文 ちはやふる かものやしろの ひめこまつ
 よろつ世ふとも いろはかはらし
かな ちはやふる かものやしろの ひめこまつ
 よろつよふとも いろはかはらし