紫式部集42 夕霧に:原文対訳・逐語分析

41なにかこの 紫式部集
第四部
夫の死

42夕霧に
43散る花を
原文
(実践女子大本)
現代語訳
(渋谷栄一)
注釈
【渋谷栄一】
亡くなりし人の女の、  亡くなった夫の娘が、 【亡くなりし人の女の】-亡き夫宣孝の娘。他の妻の娘。
親の手書きつけたりけるものを見て、 父親の筆跡で書きつけてあったものを見て、  
言ひたりし。 詠んで寄越した歌。  
     
夕霧に 夕霧のために  
み島隠れし 島蔭に隠れた  
鴛鴦の子の 鴛鴦の子のように  
跡を見る見る 父の筆跡を見ながら  
惑はるるかな 悲嘆に暮れています 【惑はるる】-途方に暮れている、悲嘆に暮れている。
     

参考異本=後世の二次資料

「みしま、三島、摂津又筑前 家集  紫式部
夕霧にみしまがくれしをしのこの跡を見る見るまどはるるかな
 此歌は、なく成りにける人の親のてして書付けたる物を見てよめると云々」(静嘉堂文庫本「夫木和歌抄」雑五 島 一〇五八四)