徒然草151段 ある人の云はく:原文

能をつかんと 徒然草
第四部
151段
ある人の云
西大寺の静然

 
 ある人の云はく、年五十になるまで上手に至らざらん芸をば捨つべきなり。
励み習ふべき行く末もなし。
老人の事をば、人もえ笑はず。
衆に交はりたるも、あいなく、見苦し。
大方、よろづのしわざは止めて、暇あるこそ、めやすく、あらまほしけれ。
世俗の殊に携はりて生涯をクラスは、下愚の人なり。
ゆかしく覚えん事は、学び訊くとも、その趣を知りなば、おぼつかなからずして止むべし。
もとより望むことなくして止まんは、第一の事なり。