ある人の云はく、年五十になるまで上手に至らざらん芸をば捨つべきなり。 励み習ふべき行く末もなし。 老人の事をば、人もえ笑はず。 衆に交はりたるも、あいなく、見苦し。 大方、よろづのしわざは止めて、暇あるこそ、めやすく、あらまほしけれ。 世俗の殊に携はりて生涯をクラスは、下愚の人なり。 ゆかしく覚えん事は、学び訊くとも、その趣を知りなば、おぼつかなからずして止むべし。 もとより望むことなくして止まんは、第一の事なり。