紫式部集115 雲間なく:原文対訳・逐語分析

114菊の露 紫式部集
第十一部
終の予感

115雲間なく
異本122:日記歌8
(古本巻末日記歌と日記の歌は順不同)
116ことわりの
原文
実践女子大本
(定家本系筆頭)
現代語訳
(渋谷栄一)
注釈
【渋谷栄一】
時雨する日、  時雨の降る日、  
小少将の君、 小少将の君が 【小少将の君】-源扶義の女、道長の北の方倫子の姪。
里より、 実家から、  
     
雲間なく 物思いに雲の切れ間なく 【雲間】-底本「くまも」、諸本によって改める。
眺むる空も 眺める空もわたしの心同様に  
かきくらし かき曇って 【かきくらし】-心が真っ暗になって、の意を暗喩。
いかにしのぶる どのように堪えて降る 【しのぶる時雨】-主語は小少将の君。「時雨」は涙を象徴。
時雨なるらむ 時雨なのでしょうか 【なるらむ】-副詞「いかに」と呼応。断定の助動詞「なる」連体形+推量の助動詞「らむ」原因推量の意。
     

参考異本=本人日記歌+後世の二次資料

*「雲間なくながむるそらもかきくらしいかにしのぶるしぐれなるらむ」(黒川本「紫日記」七)
 
*「さとにいでて時雨しける日、むらさき式部につかはしける  上東門院小少将
雲まなくながむるそらもかきくらしいかにしのぶるしぐれなるらむ」(樋口芳麻呂氏本「新勅撰集」冬 三八〇)