紫式部集57 閉ぢたりし:原文対訳・逐語分析

56身の憂さは 紫式部集
第六部
初々し出仕

57閉ぢたりし
異本92
58深山辺の
原文
(実践女子大本)
現代語訳
(渋谷栄一)
〈適宜当サイトで改め〉
注釈
【渋谷栄一】
〈適宜当サイトで補注〉
まだいと初々しきさまにて、  まだ宮仕えにたいそう物慣れない状態で、 【初々しき】-「うゐ/\し」は平安の仮名遣い。
古里に帰りてのち、 実家に帰って後、  
ほのかに語らひける人に、 わずか〈ほのか〉に話し合った人に、

【ほのかに語らひける人】-出仕して初めて言葉を交した同僚の女房

〈かどうかは文面上不明。

「ほのかに」は1番同様の淡い気持ち。字義を無視した即物的議論は誤り。ここでは、ほんのり心通わした様。その妥当性が以下の和歌からも証明できる〉

     
閉ぢたりし 閉ざしていた  
岩間の氷 岩間の氷が

【岩間の氷】-同僚の女房の心を譬喩する。

〈とされるが、どちらともない表現と見る〉

うち解けば

うち解ければ

わずかに解け出すように春になったら

〈うち解け:仲良くなる→うちらそのうち打ち解けれるよね?
をだえの水も 途絶えていた水も

【をだえの水】-途絶えていた水。自分自身を喩える。

〈とされるが、これは水流で交流を象徴すると解する〉

影見えじやは 姿を現さないでしょうか  
  わたしもきっとまた出仕しましょうよ