紫式部集22 かき曇り:原文対訳・逐語分析

21磯隠れ 紫式部集
第二部
近江・越前

22かき曇り
23知りぬらむ
原文
(実践女子大本)
現代語訳
(渋谷栄一)
注釈
【渋谷栄一】
夕立ちしぬべしとて、  夕立ちが来そうだと言って、  
空の曇りて 空がかき曇って  
ひらめくに、 稲妻がひらめくので、 【ひらめくに】-稲妻がひらめく。
     
かき曇り 空がかき曇って  
夕立つ波の 夕立ちのために波が 【夕立つ波】-夕立ちのために急に風が出て来て波が立つさま。
荒ければ 荒くなったので  
浮きたる舟ぞ 浮いている舟の上で  
しづ心なき 落ち着いていられない  
     

参考異本=後世の二次資料

「みづうみの舟にて、ゆふだちのしぬべきよしを申しけるをききて、よみ侍りける  紫式部
 かきくもり夕だつ浪のあらければうきたる船ぞしづ心なき」(寿本「新古今集」覊旅 九一八)