古事記 片歌~原文対訳

思国歌 古事記
中巻⑤
12代 景行天皇
倭建の歌物語
8 片歌
大御葬の歌
原文 書き下し
(武田祐吉)
現代語訳
(武田祐吉)

出雲(たちくも)

     
又歌曰。 また歌よみしたまひしく、 またお歌い遊ばされました。
     
波斯祁夜斯 はしけやし なつかしの
和岐幣能迦多用 吾家わぎへの方よ わが家やの方ほうから
久毛韋多知久母 雲居起ち來も。 雲が立ち昇つて來るわい。
     
此者片歌也。  こは片歌なり。  これは片歌かたうたでございます。
     

草薙剣>ミヤズ姫

     
此時御病甚急, この時御病いと急にはかになりぬ。 この時に、御病氣が非常に重くなりました。
爾御歌曰。 ここに御歌よみしたまひしく、 そこで、御歌みうたを、
     
袁登賣能。 孃子をとめの 孃子おとめの
登許能辨爾。 床の邊べに 床とこのほとりに
和賀淤岐斯。 吾わが置きし わたしの置いて來た
都流岐能多知。 つるぎの大刀、 良よく切れる大刀たち、
曾能多知波夜。 その大刀はや。 あの大刀たちはなあ。
     
歌竟即崩。  と歌ひ竟をへて、
すなはち崩かむあがりたまひき。
と歌い終つて、
お隱れになりました。
     
爾貢上驛使。 ここに驛使はゆまづかひを
上たてまつりき。
そこで急使を上せて
朝廷に申し上げました。
思国歌 古事記
中巻⑤
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倭建の歌物語
8 片歌
大御葬の歌