源氏物語 和歌 人物別内訳一覧

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人物別内訳
各巻別内訳
源氏物語和歌:人物分布

 

 以下、通説と相違する認定に※をつけた。

 これは必ずしも学説で意見が分かれている認定で異説を支持したという訳ではなく、通説でも大した根拠がなく(学説の特異な文献論ではなく、和歌の総合的な理解がかかわるから)、文脈を多角的に検討すると、認定を絶対維持できない歌がいくつかある。

 

 今ここで全体の配分にかかわる一例を挙げると、通説は落葉宮(夕霧が寝取る柏木の未亡人)10首とするが(全集6・587p)、以下に示す分布では十首以上に明確な壁(藤壺・六条御息所クラス)があるため、その認定はそれなりの重みがあることになるが、落葉宮がそこに列するのは明らかな役不足で、してみるとその認定には消去法での推測認定が少なくとも一首ある。その認定は代作理論にかかわり、典型とみなして結論を決めるという誤りがある。

 即ち柏木巻「柏木に葉守の神はまさずとも」につき「少将の君といふ人をして」という代作の文脈があるところ、通説はこれを少将の君の歌とはせず、夕霧が訪問の目的とした落葉による返歌と典型にはめこんで認定するが、これは簾内で夕霧をあしらっていた女房集団の中で返答すべき立場にある少将の君が代表した歌と解すべき文脈であり(これかれつきしろふ。この御あへしらひきこゆる少将の君といふ人して)、さらに「葉守」という歌詞も落葉一人ではなく集団を代表したものと解される(使者・代理でなく代表)。柏木についていた葉が落葉一枚というのはおかしい。これは言わば並列的な女社会的代作と上下一方的な男社会的代作の理解の違いであり、前者を後者本位の見方で捉えた一例と思う。

 

  人物:説明 歌数
 

十首以上:主役級・物語の軸

1 光る源氏:著者の理想の男。圧倒的歌人
幼馴染の妻が早世(→筒井筒・梓弓)
221
2 :柏木の密通子・頭中将孫
歌で存在意義を問う物語最大の問題人物
※58
3 夕霧:源氏の嫡男。影薄い(→朝康) ※37
4 浮舟:八の宮(源氏異母弟)三女。
空蝉と対となる著者の投影3
26
5 匂宮:今上帝三宮。薫と匂いでセット 24
6 紫の上:源氏の後妻。著者の投影2 23
7 明石の君:源氏の連れ帰り現地妻 22
8 玉鬘:頭中将と夕顔の娘 ※21
9 中の君:八宮次女 19
10 頭中将:源氏のライバル(→業平) ※17
11 柏木:頭中将の子(→棟梁) 15
12 大君:八宮長女 13
13 藤壺:光と並ぶ輝く日の宮(→小町・衣通姫) ※11
14 六条御息所:因縁の女性(→二条の后=車) 11
 

九首~四首:準主役

15 蛍兵部卿宮:源氏異母弟 9
16 朧月夜 9
17 落葉宮:柏木妻後に夕霧妻・朱雀女二宮 ※9
18 斎宮:梅壺・通称秋好中宮 ※8
19 朱雀帝:源氏異母兄 8
20 中将:妹尼の娘婿 8
21 冷泉帝:源氏と藤壺の密通子 8
22 雲居雁:夕霧の妻 7
23 空蝉:源氏が言い寄り煩悶する人妻。
著者の投影1
7
24 女三宮:朱雀の娘 7
25 朝顔:斎院 7
26 妹尼:横川僧都の妹 7
27 末摘花 7
28 明石尼君:明石の母 7
29 花散里 6
30 源典侍:露骨な下ネタを歌う盛んな老女 6
31 夕顔:早世した玉鬘の母 6
32 蔵人少将:夕霧の子 5
33 尼君:紫祖母 5
34 柏木弟:弁の君・弁少将
・按察使大納言・紅梅大納言
5
35 八宮:源氏異母弟 5
36 弁:尼君・柏木の乳母子 5
37 明石入道 5
38 桐壺帝 4
39 大宮:頭中将母 4
40 明石姫君 4
41 鬚黒 4
 

三首~二首:主要人物付き脇役

42 一条御息所:柏木妻落葉の母 3
43 王命婦 3
44 玉鬘乳母 3
45 五節 3
46 藤典侍:惟光娘・夕霧愛人 3
47 近江君 2
48 今上帝 2
49 宰相君:大君方女房 2
50 少納言乳母 2
51 祖母北の方 2
52 僧都 2
53 大輔君:中君方女房 2
54 中将君:源氏に仕える女房 2
55 浮舟母 2
56 木工の君:髭黒女房 2
57 鬚黒長女:通称大君 2
 

一首のみ:端役

58 いま一人:女房 1
59 なれき:大君方の童女 1
60 阿闍梨 1
61 按察使君 1
62 惟光 1
63 右近 1
64 右近尉 1
65 右大臣 1
66 雲居雁乳母 1
67 衛門督 1
68 宮大夫 1
69 桐壺更衣 1
70 軒端荻 1
71 左近少将:浮舟求婚者 1
72 左大臣 1
73 左大弁 1
74 左馬頭 1
75 左兵衛督 1
76 宰相中将 1
77 斎宮の女別当 1
78 侍従 1
79 侍従 1
80 式部丞 1
81 若き人々:中宮方女房 1
82 若き人々 1
83 若き人々 1
84 若き人々 1
85 1
86 1
87 1
88 1
89 女房 1
90 女房 1
91 小宰相君:明石中宮女房 1
92 小侍従:女三宮乳母子 1
93 少将君:一条御息所の姪 1
94 真木柱 1
95 1
96 前の右近の尉 1
97 大弐の典侍 1
98 大夫監 1
99 中の君方の童女 1
100 中将の御許?玉鬘 1
101 中将の御許 1
102 中将君 1
103 中納言君 1
104 中務君:紫付女房 1
105 殿上人 1
106 藤侍従:玉鬘の子・薫のいとこ 1
107 導師 1
108 内の人:女房 1
109 内の人:女房の一人 1
110 乳母 1
111 乳母 1
112 髭黒 1
113 兵部卿宮:紫父・藤壺兄 1
114 兵部君 1
115 平内侍 1
116 民部の大輔 1
117 命婦 1
118 夕霧乳母 1
119 良清 1
120 麗景殿 1
121 六の君:夕霧六女 1
122 靫負命婦 1
123 鬚黒次女:中の君 1
124 鬚黒北の方:真木柱母 1
125 頭中将=夕霧の子代作※(通説夕霧認定) 1