徒然草143段 人の終焉の有様:原文

心なし 徒然草
第四部
143段
人の終焉
栂尾の上人

 
 人の終焉の有様のいみじかりし事など、人の語るを聞くに、ただ静かにして乱れずと言はば心にくかるべきを、愚かなる人は、あやしく、異なる相を語りつけ、言ひし言葉も振舞も、己れが好む方に誉めなすことこそ、その人の日ごろの本意にもあらずと覚ゆれ。
 

 この大事は、権化の人も定むべからず。
博学の士も測るべからず。
己れ違ふ所なくは、人の見聞くにはよるべからず。