原文 |
書き下し (武田祐吉) |
現代語訳 (武田祐吉) |
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於是 天津 日高日子番能 邇邇藝能命。 |
ここに 天あまつ 日高日子番ひこひこほの 邇邇藝ににぎの命、 |
さて ヒコホノ ニニギの命は、 |
於笠紗御前。 | 笠紗かささの御前みさきに、 | カササの御埼みさきで |
遇麗美人。 |
麗かほよき美人をとめに 遇ひたまひき。 |
美しい孃子おとめに お遇いになつて、 |
爾問誰女。 |
ここに、 「誰が女ぞ」と問ひたまへば、 |
「どなたの女子むすめごですか」 とお尋ねになりました。 |
答白之。 | 答へ白さく、 | |
大山津見神之女。 |
「大山津見 おほやまつみの神の女、 |
そこで「わたくしは オホヤマツミの神の女むすめの |
名神阿多都比賣。 〈此神名以音〉 |
名は神阿多都 かむあたつ比賣。 |
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亦名謂 木花之 佐久夜毘賣。 〈此五字以音〉 |
またの名は 木この花はなの 佐久夜さくや毘賣とまをす」 とまをしたまひき。 |
木この花の 咲さくや姫です」 と申しました。 |
又問 有汝之兄弟乎。 |
また「汝が兄弟はらからありや」 と問ひたまへば |
また「兄弟がありますか」 とお尋ねになつたところ、 |
答白 我姉 石長比賣在也。 |
答へ白さく、 「我が姉 石長いはなが比賣あり」 とまをしたまひき。 |
「姉に 石長姫いわながひめがあります」 と申し上げました。 |
爾詔。 | ここに詔りたまはく、 | 依つて仰せられるには、 |
吾欲目合汝 奈何。 |
「吾、汝に目合まぐはひせむ と思ふはいかに」 とのりたまへば |
「あなたと結婚けつこんをしたい と思うが、どうですか」 と仰せられますと、 |
答白 僕不得白。 |
答へ白さく、 「僕あはえ白さじ。 |
「わたくしは何とも申し上げられません。 |
僕父 大山津見神 將白。 |
僕が父 大山津見の神ぞ白さむ」 とまをしたまひき。 |
父の オホヤマツミの神が申し上げるでしよう」 と申しました。 |