古事記~木花之佐久夜毘賣 原文対訳

天のウズメ 古事記
上巻 第五部
ニニギの物語
木花之佐久夜毘賣
(このはなのさくやひめ)
石長比賣
原文 書き下し
(武田祐吉)
現代語訳
(武田祐吉)
於是
天津
日高日子番能
邇邇藝能命。
 ここに
天あまつ
日高日子番ひこひこほの
邇邇藝ににぎの命、
 さて
ヒコホノ
ニニギの命は、
於笠紗御前。 笠紗かささの御前みさきに、 カササの御埼みさきで
遇麗美人。 麗かほよき美人をとめに
遇ひたまひき。
美しい孃子おとめに
お遇いになつて、
爾問誰女。 ここに、
「誰が女ぞ」と問ひたまへば、
「どなたの女子むすめごですか」
とお尋ねになりました。
答白之。 答へ白さく、  
大山津見神之女。 「大山津見
おほやまつみの神の女、
そこで「わたくしは
オホヤマツミの神の女むすめの
名神阿多都比賣。
〈此神名以音〉
名は神阿多都
かむあたつ比賣。
 
亦名謂
木花之
佐久夜毘賣

〈此五字以音〉
またの名は
木この花はなの
佐久夜さくや毘賣とまをす」
とまをしたまひき。
木この花の
咲さくや姫です」
と申しました。
     
又問
有汝之兄弟乎。
また「汝が兄弟はらからありや」
と問ひたまへば
また「兄弟がありますか」
とお尋ねになつたところ、
答白
我姉
石長比賣在也。
答へ白さく、
「我が姉
石長いはなが比賣あり」
とまをしたまひき。
「姉に
石長姫いわながひめがあります」
と申し上げました。
     
爾詔。 ここに詔りたまはく、 依つて仰せられるには、
吾欲目合汝
奈何。
「吾、汝に目合まぐはひせむ
と思ふはいかに」
とのりたまへば
「あなたと結婚けつこんをしたい
と思うが、どうですか」
と仰せられますと、
答白
僕不得白。
答へ白さく、
「僕あはえ白さじ。
「わたくしは何とも申し上げられません。
僕父
大山津見神
將白。
僕が父
大山津見の神ぞ白さむ」
とまをしたまひき。
父の
オホヤマツミの神が申し上げるでしよう」
と申しました。
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ニニギの物語
木花之佐久夜毘賣
(このはなのさくやひめ)
石長比賣