万葉集 第十一巻：一覧と配置

　
　万葉集第十一巻、その一覧と配置（歌の内容はリンク先を参照）。
　ここでは個別の歌の検討というより、全体の配置に示される万葉の構造を見る。
　

　11巻は、10巻同様、全て人麻呂歌集と無名の歌。極めて特殊であることは言うまでもない。これは万葉は本質的に人麻呂の歌集という強烈なメッセージ。
　古今相聞往来歌類上と題し、これまでにない新たな分類を出し、両者の構図を対比する。
　つまり、旋頭歌、正述心緒：ただにこころを（心緒）述ぶ、寄物陳思：物に寄せて思ひをのぶ、問答、譬喩の5分類。
　先頭の旋頭歌のみ人麻呂歌集の分類、末尾の譬喩のみ無名の歌がもつ。よって、この本巻の配置も人麻呂を上にかたく立てた赤人によるものである。
　

　また、2802左注にある無名の歌「足日木乃　山鳥之尾乃　四垂尾乃　長永夜乎　一鴨将宿」は、百人一首3の人麻呂の歌。

　一般に百人一首3の出典は拾遺恋三778とされるが、それは公の「人まろ」認定込みのことで、さらにその出典は万葉（万葉は本来人麻呂の本だから）。
　似た歌ではない。同じ歌。拾遺が文字を当てただけ（葦引の山鳥の尾のしたりをのなかなかし夜をひとりかもねむ）。
　その証拠に、百人一首では「あしびき」について一般に万葉に即した「足」を当てる。足を引くからあしびき。
　葦にしてどういう意味がある。草刈だろうか。同音を当てれば何でも掛かりではない。センス（意味）が大事。
　

　「しだりを」とは、おしどり（夫婦）の暗示。長い尾とかけ長い夜。これが掛詞。縁語や序詞などと分類して理解したことになるか。ならない。
　意味がとれないのと意味がないのは違う。天地の差がある。後人が自分達の目線で違う解釈を与えても、そういう意味があることにはならない。
　万葉の解釈が意味不明なのに知ったようにして押し切る背景は、人麻呂（＝安万侶）を、その他大勢の一人と混同して軽視しているからである。
　地上の野蛮な権力行使を戒めた古事記の精神を軽んじるからである。だから天皇万世になる。あまりに安易。そういう坊が国を壊滅させてきた。
　

第十一巻