紫式部集43 散る花を:原文対訳・逐語分析

42夕霧に 紫式部集
第四部
夫の死

43散る花を
44亡き人に
原文
(実践女子大本)
現代語訳
(渋谷栄一)
注釈
【渋谷栄一】
同じ人、  同じ人が、 【同じ人】-亡き夫宣孝の娘。
「荒れたる宿の 「荒れた我が家の  
桜のおもしろきこと」とて、 桜の花が美しいこと」と言って、  
折りておこせたるに、 折って寄越したので、 【折りて】-実践本「おる」は定家の仮名遣い。
【おこせたる】-「をこす」は定家の仮名遣い。
     
散る花を 散る花を  
嘆きし人は 嘆いていた〈人〉は  
木のもとの 散った後の木のもとの〈子供達が〉 【木のもと】-桜の花の散った後、自分の死後を喩える。〈木の下と子の許をかける(新大系・集成)〉
寂しきことや 寂しいことを  
かねて知りけむ かねて御存じでいたのでしょうか  
     
思ひ絶えせぬ」と、  「心配が絶えない」と、 【思ひ絶えせぬ】-「さけばちるさかねばこひし山桜 思ひたえせぬ花のうへかな」(中院本「拾遺集」春 中務 三六)を引歌とする。
亡き人の言ひけることを あの亡くなった方が言っていたことを  
思ひ出でたるなり。 思い出したのである。