源氏物語 蛍:巻別和歌8首・逐語分析

胡蝶 源氏物語
和歌一覧
各巻別内訳
25帖 蛍
常夏

 
 源氏物語・蛍(ほたる)巻の和歌8首を抜粋一覧化し、現代語訳と歌い手を併記、原文対訳の該当部と通じさせた。

 

 内訳:3(玉鬘)、2×2(蛍兵部卿宮=源氏異母弟、源氏)、1(花散里)※最初最後
 

胡蝶・和歌の対応の程度と歌数
和歌間の文字数
即答 2首  40字未満
応答 6首  40~100字未満
対応 0  ~400~1000字+対応関係文言
単体 0  単一独詠・直近非対応

※分類について和歌一覧・総論部分参照。

 

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 上下の句に分割したバージョン。見やすさに応じて。

 なお、付属の訳はあくまで通説的理解の一例なので、訳が原文から離れたり対応していない場合、より精度の高い訳を検討されたい。
 


  原文
(定家本校訂)
現代語訳
(渋谷栄一)
372
鳴く
聞こえぬ虫の
思ひだに
人のつには
ゆるものかは
〔蛍兵部卿宮:源氏弟〕鳴く声も
聞こえない螢の
火でさえ
人が消そうとして
消えるものでしょうか
373
はせで
身をのみ焦がす
こそ
言ふよりまさる
思ひなるらめ
〔玉鬘〕声には出さず
ひたすら身を焦がしている
螢の方が
口に出すよりもっと
深い思いでいるでしょう
374
今日さへや
引く人もなき
水隠れに
生ふる菖蒲
根の泣かれ
〔蛍兵部卿宮〕今日までも
引く人もない
水の中に隠れて
生えている菖蒲の
根のように相手にされないわたしはただ声を上げて泣くだけなのでしょうか
375
あらはれて
いとど浅くも
見ゆるかな
菖蒲もわかず
泣かれける根の
〔玉鬘〕きれいに見せていただきまして
ますます浅く
見えました
わけもなく
泣かれるとおっしゃるあなたのお気持ちは
376
その
すさめぬ草と
名に立てる
汀の菖蒲
今日や引きつる
〔花散里〕馬も
食べない草として
有名な
水際の菖蒲のようなわたしを
今日は節句なので、引き立てて下さったのでしょうか
377
鳰鳥に
影をならぶる

いつか菖蒲
引き別るべき
〔源氏〕鳰鳥のように
いつも一緒にいる
若駒のわたしは
いつ菖蒲のあなたに
別れたりしましょうか
378
思ひあまり
昔の跡を
訪ぬれど

に背ける
子ぞたぐひなき
〔源氏〕思いあまって
昔の本を
捜してみましたが
親に背いた
子供の例はありませんでしたよ
379
古き跡を
訪ぬれど
げに
なかりけり
この世にかかる
の心は
〔玉鬘〕昔の本を
捜して読んでみましたが、おっしゃるとおり
ありませんでした。
この世にこのような
親心の人は