古事記 垂仁天皇の系譜~原文対訳

崇神天皇陵 古事記
中巻④
11代 垂仁天皇
宮と系譜
サホ姫とサホ彦
 中巻
 ①神武 ②八帝 ③崇神 ④垂仁
 ⑤景行 ⑥成務 ⑦仲哀 ⑧應神

目次
11代 垂仁天皇(すいにん)
(師木玉垣宮)
后妃・皇子女
カグヤ姫
オホタラシ彦オシロワケ(景行天皇)
傍系の系譜
倭比賣 (伊勢創祀:外部認定の注)

 

宮と系譜

原文 書き下し
(武田祐吉)
現代語訳
(武田祐吉)

宮(師木玉垣宮)

     
伊久米伊理毘古
伊佐知命。
 伊久米伊理毘古伊佐知
いくめいりびこいさちの命、
 イクメイリ彦
イサチの命(垂仁天皇)、
坐師木玉垣宮。 師木しきの
玉垣たまがきの宮にましまして、
大和の師木しきの
玉垣の宮においでになつて
治天下也。 天の下治らしめしき。 天下をお治めなさいました。
     

后妃・皇子女

     
此天皇。娶。
沙本毘古命之妹。
佐波遲比賣命。
この天皇、
沙本毘古さほびこの命が妹、
佐波遲さはぢ比賣の命に娶ひて、
この天皇、
サホ彦の命の妹の
サハヂ姫の命と結婚して
生御子。
品牟都和氣命。
〈一柱〉
生みませる御子、
品牟都和氣ほむつわけの命
一柱。
お生うみになつた御子みこは
ホムツワケの命
お一方です。
     
又娶。
旦波比古多多須
美知宇斯王之女。
氷羽州比賣命。
また旦波たにはの
比古多多須美知能宇斯
ひこたたすみちのうしの王が女、
氷羽州ひばす比賣の命に娶ひて、
また丹波たんばの
ヒコタタス
ミチノウシの王の女の
ヒバス姫の命と結婚して
生御子。 生みませる御子、 お生みになつた御子は
印色之
入日子命。
〈印色二字以音〉
印色いにしきの
入日子いりひこの命、
イニシキノ
イリ彦の命・
大帶日子
淤斯呂和氣命。
〈自淤至氣
五字以音〉
次に大帶日子
淤斯呂和氣
おほたらしひこ
おしろわけの命、
オホタラシ彦
オシロワケの命・
次大中津日子命。 次に大中津日子
おほなかつひこの命、
オホナカツ彦の命・
倭比賣命。 次に倭やまと比賣の命、 ヤマト姫の命・
次若木入日子命。 次に若木わかきの
入日子いりひこの命
ワカキノイリ彦の命の
〈五柱〉 五柱。 お五方です。
     
又娶。
其氷羽州比賣命之弟。
沼羽田之入毘賣命。
またその
氷羽州ひばす比賣の命が弟、
沼羽田ぬばたの
入いり毘賣の命に娶ひて、
またそのヒバス姫の命の妹、
ヌバタノイリ姫の命と結婚して
生御子。 生みませる御子、 お生みになつた御子は
沼帶別命。 沼帶別ぬたらしわけの命、 ヌタラシワケの命・
次伊賀帶日子命 次に伊賀帶日子
いがたらしひこの命
イガタラシ彦の命の
〈二柱〉 二柱。 お二方です。
     
又娶
其沼羽田之
入日賣命之弟。
阿邪美能
伊理毘賣命。
〈此女王名以音〉
またその
沼羽田ぬばたの
入いり日賣の命が弟、
阿耶美あざみの
伊理いり毘賣の命に娶ひて、
またその
ヌバタノ
イリ姫の命の妹の
アザミノ
イリ姫の命と結婚して
生御子。 生みませる御子、 お生みになつた御子は
伊許婆夜和氣命。 伊許婆夜和氣
いこばやわけの命、
イコバヤワケの命・

阿邪美都
比賣命。
次に、
阿耶美都
あざみつ比賣の命
アザミツ姫の命の
〈二柱。
此二王名以音〉
二柱。 お二方です。
     

カグヤ姫

     
又娶
大筒木垂根王之女。
迦具夜比賣命。
また
大筒木垂根
おほつつきたりねの王が女、
迦具夜かぐや比賣の命に娶ひて、
また
オホツツキタリネの王の女の
カグヤ姫の命と結婚して
生御子。
袁邪辨王。
〈一柱〉
生みませる御子、
袁那辨
をなべの王一柱。
お生みになつた御子は
ヲナベの王
お一方です。
     
又娶
山代大國之
淵之女。
苅羽田刀辨。
〈此二字以音〉
また
山代の大國おほくにの
淵ふちが女、
苅羽田刀辨
かりばたとべに娶ひて、
また
山代やましろの大國おおくにの
フチの女の
カリバタトベと結婚して
生御子。 生みませる御子、 お生みになつた御子は
落別王。 落別おちわけの王、 オチワケの王・

五十日帶日子王。
次に
五十日帶日子
いかたらしひこの王、
イカタラシ彦の王・

伊登志別王。
〈伊登志
三字以音〉
次に
伊登志別
いとしわけの王
三柱。
イトシワケの王の
お三方です。
     
又娶
其大國之淵之女。
弟苅羽田刀辨。
また
その大國おほくにの淵ふちが女、
弟苅羽田刀辨
おとかりばたとべに娶ひて、
またその大國のフチの女の
オトカリバタトベと結婚して、
生御子。 生みませる御子、 お生みになつた御子は、
石衝別王。 石衝別いはつくわけの王、 イハツクワケの王・
次石衝毘賣命。
亦名
布多遲能
伊理毘賣命。
次に石衝いはつく毘賣の命、
またの名は
布多遲ふたぢの
伊理いり毘賣の命
イハツク姫の命
またの名は
フタヂノ
イリ姫の命の
〈二柱〉 二柱。 お二方です。
     
凡此天皇之御子等。
十六王。
およそこの天皇の御子等、
十六王とをまりむはしらませり。
すべてこの天皇の皇子たちは
十六王おいでになりました。
〈男王十三。女王三〉 (男王十三柱、女王三柱) 男王十三人、女王三人です。
     

オホタラシ彦オシロワケの命(景行天皇)

     
故大帶日子
淤斯呂和氣命者。
治天下也。
 かれ
大帶日子淤斯呂和氣
おほたらしひこ
おしろわけの命は、
天の下治らしめしき。
 その中で
オホタラシ彦
オシロワケの命は、
天下をお治めなさいました。
〈御身長。
一丈二寸。
御脛長四尺一寸也〉
(御身のたけ一丈二寸、
御脛の長さ四尺一寸ましき)
御身おみの長さ一丈二寸、
御脛おんはぎの長さ四尺一寸ございました。
     

傍系の系譜

     

印色
入日子命者。
次に
印色いにしきの
入日子いりひこの命は、
次にイニシキノ
イリ彦の命は、
作血沼池。 血沼ちぬの池を作り、 血沼ちぬの池・
又作狹山池。 また狹山さやまの池を作り、 狹山さやまの池を作り、
又作日下之
高津池。
また日下くさかの
高津たかつの池を作りたまひき。
また日下くさかの
高津たかつの池をお作りになりました。
     
又坐
鳥取之
河上宮。
また
鳥取ととりの
河上の宮にましまして、
また
鳥取ととりの
河上かわかみの宮においでになつて
令作
横刀壹仟口。
横刀たち壹仟口ちぢを
作らしめたまひき。
大刀一千振ふりを
お作りになつて、
是奉納
石上神宮。
こを石いその上かみの神宮に
納めまつる。
これを石上いそのかみの神宮じんぐうに
お納おさめなさいました。
即坐其宮。
定河上部也。
すなはちその宮にましまして、
河上部を定めたまひき。
そこでその宮においでになつて
河上部をお定めになりました。
     
次大中津日子命者。 次に大中津日子
おほなかつひこの命は、
次にオホナカツ彦の命は、
〈山邊之別。 山邊の別、 山邊の別・
三枝之別。 三枝の別、 三枝さきくさの別・
稻木之別。 稻木の別、 稻木の別・
阿太之別。 阿太の別、 阿太の別・
尾張國之三野別。 尾張の國の三野の別、 尾張の國の三野の別・
吉備之石无別。 吉備の石旡なしの別、 吉備の石无いわなしの別・
許呂母之別。 許呂母の別、 許呂母ころもの別・
高巣鹿之別。 高巣鹿の別、 高巣鹿たかすかの別・
飛鳥君。 飛鳥の君、 飛鳥の君・
牟禮之別等祖也〉 牟禮の別等が祖なり。 牟禮の別等の祖先です。
     

倭比賣

     
倭比賣命者。
〈拜祭
伊勢大神宮也〉
次に倭やまと比賣の命は、
伊勢の大神の宮を
拜いつき祭りたまひき。
次にヤマト姫の命は
伊勢の大神宮を
お祭りなさいました。
     
次伊許婆夜和氣王者。
〈沙本穴太部之
別祖也〉
次に伊許婆夜和氣
いこばやわけの王は、
沙本の穴本あなほ部の
別が祖なり。
次にイコバヤワケの王は、
沙本の穴本部あなほべの
別の祖先です。
     
次阿邪美都比賣命者。
〈嫁稻瀬毘古王〉
次に阿耶美都あざみつ比賣の命は、
稻瀬毘古の王に嫁あひましき。
次にアザミツ姫の命は、
イナセ彦の王に嫁ぎました。
次落別王者。 次に落別おちわけの王は、 次にオチワケの王は、
〈小月之山君。
三川之衣君之祖也〉
小目の山の君、
三川の衣の君が祖なり。
小目おめの山の君・
三川の衣の君の祖先です。
次五十日帶日子王者。 次に五い十日帶日子かたらしひこの王は、 次にイカタラシ彦の王は、
〈春日山君。 春日の山の君、 春日の山の君・
高志池君。 高志の池の君、 高志こしの池の君・
春日部君之祖〉 春日部の君が祖なり。 春日部の君の祖先です。
次伊登志和氣王者。
〈因無子而。
爲子代。定伊都部〉
次に伊登志和氣いとしわけの王は、
子なきに因りて、
子代として、伊登志部を定めき。
次にイトシワケの王は、
子がありませんでしたので、
子の代りとして伊登志部を定めました。
     
次石衝別王者。
〈羽咋君。
三尾君之祖〉
次に石衝別
いはつくわけの王は、
羽咋はくひの君、
三尾の君が祖なり。
次にイハツクワケの王は
羽咋はくいの君・
三尾の君の祖先です。
     
次布多遲能
伊理毘賣命者。
〈爲倭建命之后〉
次に
布多遲ふたぢの
伊理いり毘賣の命は、
倭建の命の后となりたまひき。
次に
フタヂノ
イリ姫の命は
ヤマトタケルの命の妃きさきになりました。
崇神天皇陵 古事記
中巻④
11代 垂仁天皇
宮と系譜
サホ姫とサホ彦