古事記 宇治の河原の前~原文対訳

ちはやぶる宇治の渡歌 古事記
中巻⑧
15代 応神天皇
大山守の乱
4 宇治の河原の前
梓弓の歌
原文 書き下し
(武田祐吉)
現代語訳
(武田祐吉)
於是
伏隱河邊之兵。
ここに
河の邊に伏し隱れたる兵、
 そこで
河の邊に隱れた兵士が、
彼廂此廂。 彼廂此廂あなたこなた、 あちこちから
一時共興。 一時もろともに興りて、 一時に起つて
矢刺
而流。
矢刺して
流しき。
矢をつがえて攻めて
川を流れさせました。
     
故到
訶和羅之前而。
沈入。
〈訶和羅三以以音〉
かれ訶和羅かわらの前さきに
到りて
沈み入りたまふ。
そこでカワラの埼さきに
到つて
沈みました。
     
故以鉤
探其沈處者。
かれ鉤かぎを以ちて、
その沈みし處を探りしかば、
それで鉤かぎをもつて
沈んだ處を探りましたら、
繋其衣中甲而。 その衣の中なる
甲よろひに繋かかりて、
衣の中の
鎧にかかつて
訶和羅鳴。 かわらと鳴りき。 カワラと鳴りました。
     
故號其地謂
訶和羅前也。
かれ其所そこに名づけて
訶和羅の前といふなり。
依つて其處の名を
カワラの埼というのです。
ちはやぶる宇治の渡歌 古事記
中巻⑧
15代 応神天皇
大山守の乱
4 宇治の河原の前
梓弓の歌