徒然草70段 元応の清暑堂の御遊に:原文

書写の上人 徒然草
第二部
70段
元応の清暑堂
名を聞くより

 
 元応の清暑堂の御遊に、玄上は失せにし頃、菊亭大臣、牧馬を弾じ給ひけるに、座に着きて、まづ柱をさぐられたりければ、ひとつ落ちにけり。
御懐にそくひを持ち給ひたるにて、つけられにければ、神供の参るほどによく干て、ことゆゑなかりけり。
いかなる意趣かありけん、物見ける衣かづきの、寄りて放ちて、もとのやうに置きたりけるとぞ。