万葉集 難解問題一覧

 
 ここでは万葉集の難解問題を一覧する。
 

 目につくのは「紐解設奈」(1518)と、竹取の翁の長い歌(3791)。
 これは竹取物語の素材というのは当然。といっても名前だけ。
 これと古事記のかぐや姫・衣通姫(衣を通して光る姫)を合わせている。つまり参照して作ったというより、古典の参照自体を示すことに意味がある。
 これは翁やかぐやとの関係で意味を持つのではない。神を射殺しようとした後、七度廻りの貝で唯一男が死ぬ話で意味がある(Seven hold Cain's curse)。
 

 「子鹿丹 旦妻山丹 霞霏」(1817)は、末尾のたなびくで末尾の丹を引いて読む。
 「」は霞と合わさり雨の下段(たん)を非くのでたなびく。
 つまり「けさゆきて あすにはきなむと いう(が)来じか あしたのつまや(ま)、かすみたなびく」

 「霹靂之日香天之九月乃」は、あしびきの山鳥の尾のしだり尾の韻を連想。「子鹿丹」も人麻呂。
 

 最後に最初の「莫囂圓隣之大相七兄爪謁氣」。
 莫囂圓隣=ばか○と。之大相七兄爪謁氣=たいそうあつまりき。之(のう)なし、by 七なし。そんなところ。
 圓で○。丸は伏字。猿丸・蝉丸もいる。
 

 つまり難訓というより無難に解説できない歌の心だろう。
 竹取の帝への文脈(あはれ)すら美化する人達でも、直前の心幼き人に憤慨する人達でも。
 というより、そこまでして曲げる必要がなかったともいえる。
 
 帝の射殺の力を無力化する天を描いたことは、古事記・竹取共通の揺るがない文脈。
 天の使(雉名鳴女)を射殺した矢の還矢、一言主大神に矢を射ろうとし屈服した雄略、竹取で神の射殺発言をした大伴と、天人に弓を引く帝の軍勢。
 この符合で関連していないというのは無理。
 
 

目次
・01/0009「莫囂圓隣之大相七兄爪謁氣
・02/0156「已具耳矣自得見監乍共
・02/0160「智男雲
・08/1518「紐解設奈
・08/1560「始見之埼乃秋芽子者
・10/1817「子鹿丹 旦妻山丹 霞霏
・10/2033「神競者磨待無
・10/2113「手寸十名相
・13/3221「汗瑞能振
・13/3223「霹靂之日香天之九月乃
・13/3242「行靡闕矣
・13/3315「蒙沾鴨
・14/3419「奈可中次下
・15/3754「過所奈之尓 多我子尓毛
・16/3791「刺部重部 信巾裳成者之寸丹取為支屋所經 所為故為
・16/3889「非左思所念
・18/4105「牟賀思久母安流香
 ※以上は全て、冒頭のリンク先を参照している。リンク先の底本は西本願寺本とのこと。解読の参考のため、鹿持雅澄訓訂を付した。
 

莫囂圓隣之大相七兄爪謁氣

 
[歌番号] 01/0009
[題詞] 幸于紀温泉之時額田王作歌
[原文] 莫囂圓隣之大相七兄爪謁氣 吾瀬子之 射立為兼 五可新何本
[訓読] 莫囂円隣之大相七兄爪謁気 我が背子が い立たせりけむ 厳橿が本
[仮名] ***** ******* わがせこが いたたせりけむ いつかしがもと
[左注] なし
[校異] 謁 [元][類][紀] 湯
[事項] 雑歌 作者:額田王 紀州 和歌山 難訓 厳橿 斎橿 植物
[訓異] *****,[寛]ゆふつきの, *******,[寛]あふきてとひし, わがせこが,[寛]わかせこか, いたたせりけむ,[寛]いたたせるかね, いつかしがもと,[寛]いつかあはなむ,
   
  鹿持訓訂/0009
(題詞) 紀の温泉(ゆ)に幸せる時、額田王のよみたまへる歌
(訓訂) 三諸(みもろ)の山見つつゆけ 我が背子が い立たしけむ 厳橿(いつかし)が本
   

 ※訓丁では、ほぼ文字を無視しているが、これには訳がある。直後の難読「三諸之神之」(0156)と次の「神山の」(0157,0158)を参照されたい。
 つまりそっちではちゃんと取り組んでいるのを「見つつゆけ」と。つまりこっちは全くお手上げ。歌遊びとしてはかなりだが、解釈本としては…。
 しかし、そこまで読む人なら、その心をわかってくれると思ったのかもしれない。
 
 

已具耳矣自得見監乍共

 
[歌番号] 02/0156
[題詞] 明日香清御原宮御宇天皇代 [天渟中原瀛真人天皇謚曰天武天皇] / 十市皇女薨時高市皇子尊御作歌三首
[原文] 三諸之 神之神須疑 已具耳矣自得見監乍共 不寝夜叙多
[訓読] みもろの神の神杉已具耳矣自得見監乍共寝ねぬ夜ぞ多き
[仮名] みもろの かみのかむすぎ ***** ******* いねぬよぞおほき
[左注] (紀曰七年<戊>寅夏四月丁亥朔癸巳十市皇女卒然病發薨於宮中)
[校異] なし
[事項] 挽歌 作者:高市皇子 十市皇女 難訓 夢 復活 三輪山 奈良 地名
[訓異] みもろの,[寛]みもろのや, かみのかむすぎ,[寛]かみのかみすき, *****,[寛]いくにをしと, *******,[寛]みけむつつとも, いねぬよぞおほき,[寛]ねぬよそおほき,
   
  鹿持訓訂/0156
(題詞) 明日香の清御原の宮に天の下知ろしめしし天皇の代 十市皇女の薨すぎませる時、高市皇子尊のよみませる御歌三首
(訓訂) 三諸(みもろ)の神の神杉(かむすぎ) かくのみにありとし見つつ 寝(いね)ぬ夜ぞ多き
0157 神山(かみやま)の山辺(やまへ)真麻木綿(まそゆふ)短か木綿かくのみ故に長くと思ひき
0158 山吹の立ち茂みたる山清水汲みに行かめど道の知らなく
   

智男雲

 
[歌番号] 02/0160
[題詞] 一書曰天皇崩之時太上天皇御製歌二首
[原文] 燃火物 取而褁而 福路庭 入澄不言八面 智男雲
[訓読] 燃ゆる火も取りて包みて袋には入ると言はずやも智男雲
[仮名] もゆるひも とりてつつみて ふくろには いるといはずやも ***
[左注] なし
[校異] 澄 [古] 登 (塙) 燈
[事項] 挽歌 作者:持統天皇 天武天皇 難解 難訓 一書
[訓異] もゆるひも,[寛]ともしひも, いるといはずやも,[寛]いるといはすや, ***,[寛]もちをのこくも,
   
  鹿持訓訂/0160
(題詞) 一書ニ曰ク、天皇ノ崩カムアガリマセル時、太上天皇ノ御製ミヨミマセル歌オホミウタ二首
(訓訂) 燃ゆる火も取りて包みて袋には入いると言はずや面智男雲
0161 北山にたなびく雲の青雲の星離さかり行き月も離さかりて
   

紐解設奈

 
[歌番号] 08/1518
[題詞] 山上<臣>憶良七夕歌十二首
[原文] 天漢 相向立而 吾戀之 君来益奈利 紐解設奈 [一云 向河]
[訓読] 天の川相向き立ちて我が恋ひし君来ますなり紐解き設けな [一云 川に向ひて]
[仮名] あまのがは あひむきたちて あがこひし きみきますなり ひもときまけな [かはにむかひて]
[左注] 右養老八年七月七日應令
[校異] 巨→臣 [類][紀][細] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
[事項] 秋雑歌 作者:山上憶良 七夕
[訓異] あまのがは,[寛]あまのかは, あひむきたちて,[寛]こむかひたちて, あがこひし,[寛]わかこひし, ひもときまけな,[寛]ひも*****, [かはにむかひて],[寛]かはにむかひ,
   
  鹿持訓訂/1518
(題詞) 山上臣憶良が七夕なぬかのよの歌十二首とをまりふたつ
(訓訂)

天の川相向き立ちて吾(あ)が恋ひし君来ますなり紐解き設(ま)けな

(左注) 右、養老八年七月七日、令ニ応ヘテ作メリ。
   

始見之埼乃秋芽子者

 
[歌番号] 08/1560
[題詞] 大伴坂上郎女跡見田庄作歌二首
[原文] 妹目乎 始見之埼乃 秋芽子者 此月其呂波 落許須莫湯目
[訓読] 妹が目を始見の崎の秋萩はこの月ごろは散りこすなゆめ
[仮名] いもがめを **みのさきの あきはぎは このつきごろは ちりこすなゆめ
[左注] なし
[校異] 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
[事項] 秋雑歌 作者:坂上郎女 奈良県 桜井市 植物
[訓異] いもがめを,[寛]いもかめを, **みのさきの,[寛]みそめしさきの, あきはぎは,[寛]あきはきは, このつきごろは,[寛]このつきころは,
   
  鹿持訓訂/1560
(題詞) 大伴坂上郎女が跡見(とみ)の田庄(たどころ)にてよめる歌二首
(訓訂) 妹が目を跡見の崎なる秋萩はこの月ごろは散りこすなゆめ
1561 吉隠(よなばり)の猪養(ゐかひ)の山に伏す鹿の妻呼ぶ声を聞くがともしさ
   

子鹿丹 旦妻山丹 霞霏

 
[歌番号] 10/1817
[題詞] なし
[原文] 今朝去而 明日者来牟等 云子鹿丹 旦妻山丹 霞霏d
[訓読] 今朝行きて明日には来なむと云子鹿丹朝妻山に霞たなびく
[仮名] けさゆきて あすにはきなむと **** あさづまやまに かすみたなびく
[左注] (右柿本朝臣人麻呂歌集出)
[校異] 牟 [元][類] 年 / 鹿丹 [元] 庶
[事項] 春雑歌 作者:柿本人麻呂歌集 非略体 御所市 奈良県 地名 季節
[訓異] けさゆきて,[寛]けふゆきて, あすにはきなむと,[寛]あすはこむといふ, ****,[寛]こかに, あさづまやまに,[寛]あさつまやまに, かすみたなびく,[寛]かすみたなひく,
   
  鹿持訓訂/1817
(訓訂)

今朝ゆきて明日は来(こ)むちふ愛(は)しきやし朝妻山に霞たなびく

   

 人麻呂は、三連で韻を踏むことが特徴的。それがここでは、丹・丹・霞(雨かんむり+段)と。
 加えて「霏」は霞とかかることでたなびくと読む。なぜなら、同じ雨の下にある非をもって、霞の下の段をとる(引く)からである。
 したがって、これ一字だけでは、たなびくとは読めない霞ありきの文字。
 
 末尾にたなびく(霞霏)とあるから、末尾の丹を段とかけて引いて読む。但し、旦は引かない(頭なので)。
 そして丹をとると「妻山」と「子しか」しか残らない。
 となると、「けさゆきて あすにはこむと いう(も)こじか あしたのつまや かすみたなびく」となる。そら、妻の身もなびくでしょうと。
 

 「旦妻」は、一般には「旦(あした=あさ)」で、あさづまと読むのだろう。
 それを末尾の「ひく」とかけ合わせ、あづさ弓を導く(アナグラム)。こう読めば、先行の「明日者」と端的にかかると。
 

 なお、最後の霞霏「d」はソース元にはそのままあるが、文字化けの類ではなく編集でできたゴミだろう(しかし難字だけに容易に消し難いという)。
 「霞霏霺(雨に微)」としているのもあるが、それは音には合うものの、「霞」の段を引けない。つまり一般的な「棚引く」を導けない。
 「久方之 天芳山 此夕 霞霏 春立下 / ひさかたの天の香具山この夕 霞たなびく 春立つらしも」(10/1812 )
 この歌と比較しても、dはこのデータにおいては不要だろう。
 

神競者磨待無

 
[歌番号] 10/2033
[題詞] (七夕)
[原文] 天漢 安川原 定而神競者磨待無
[訓読] 天の川安の川原定而神競者磨待無
[仮名] あまのがは やすのかはら* ***** ******* *******
[左注] 此歌一首庚辰年作之 / 右柿本朝臣人麻呂之歌集出
[校異] 歌 [西] 謌 / 歌 [西] 謌
[事項] 秋雑歌 作者:柿本人麻呂歌集 非略体 七夕
[訓異] あまのがは,[寛]あまのかは, やすのかはら*,[寛]やすのかはらの, *****,[寛]さたまりて, *******,[寛]こころくらへは, *******,[寛]ときまつなくに,
   
  鹿持訓訂/2033
(訓訂) 天の川安の川原に定まりて神の競(つどひ)は禁(い)む時無きを (此歌一首、庚辰ノ年ニ作メル。)
(左注) 右ノ三十八首ハ、柿本朝臣人麿ノ歌集ニ出ヅ。
   

手寸十名相

 
[歌番号] 10/2113
[題詞] (詠花)
[原文] 手寸<十>名相 殖之名知久 出見者 屋前之早芽子 咲尓家類香聞
[訓読] 手寸十名相植ゑしなしるく出で見れば宿の初萩咲きにけるかも
[仮名] ***** うゑしなしるく いでみれば やどのはつはぎ さきにけるかも
[左注] なし
[校異] <>→十 [西(右書)][元][類][紀]
[事項] 秋雑歌 植物 難訓
[訓異] *****,[寛]たきそなへ, いでみれば,[寛]いてみれは, やどのはつはぎ,[寛]やとのはつはき,
   
  鹿持訓訂/2113
(訓訂) 手もすまに植ゑしもしるく出で見れば屋戸の早萩(わさはぎ)咲きにけるかも
   

汗瑞能振

 
[歌番号] 13/3221
[題詞] 雜歌
[原文] 冬<木>成 春去来者 朝尓波 白露置 夕尓波 霞多奈妣久 汗瑞能振 樹奴礼我之多尓 鴬鳴母
[訓読] 冬こもり 春さり来れば 朝には 白露置き 夕には 霞たなびく 汗瑞能振 木末が下に 鴬鳴くも
[仮名] ふゆこもり はるさりくれば あしたには しらつゆおき ゆふへには かすみたなびく **** こぬれがしたに うぐひすなくも
[左注] 右一首
[校異] 歌 [西] 謌 / 不→木 [元][天][類]
[事項] 雑歌 難訓 動物 国見歌 春
[訓異] ふゆこもり,[寛]ふゆこなり, はるさりくれば,[寛]はるさりくれは, しらつゆおき,[寛]しらつゆおきて, かすみたなびく,[寛]かすみたなひく, ,****,[寛]あめのふる, こぬれがしたに,[寛]こぬれかしたに, うぐひすなくも,[寛]うくひすなくも,
   
  鹿持訓訂/3221
(題詞) 雑歌くさぐさのうた 是中長歌十六首
(訓訂) 冬こもり 春さり来れば 朝(あした)には 白露置き
夕へには 霞棚引く 泊瀬のや 木末(こぬれ)が下に 鴬鳴くも
   

霹靂之日香天之九月乃

 
[歌番号] 13/3223
[題詞] なし
[原文] 霹靂之 日香天之 九月乃 <鍾>礼乃落者 鴈音文 未来鳴 甘南備乃 清三田屋乃 垣津田乃 池之堤<之> 百不足 <五十>槻枝丹 水枝指 秋赤葉 真割持 小鈴<文>由良尓 手弱女尓 吾者有友 引攀而 峯文十遠仁 捄手折 吾者持而徃 公之頭刺荷
[訓読] かむとけの 日香空の 九月の しぐれの降れば 雁がねも いまだ来鳴かぬ 神なびの 清き御田屋の 垣つ田の 池の堤の 百足らず 斎槻の枝に 瑞枝さす 秋の黄葉 まき持てる 小鈴もゆらに 手弱女に 我れはあれども 引き攀ぢて 枝もとををに ふさ手折り 我は持ちて行く 君がかざしに
[仮名] かむとけの **そらの ながつきの しぐれのふれば かりがねも いまだきなかぬ かむなびの きよきみたやの かきつたの いけのつつみの ももたらず いつきのえだに みづえさす あきのもみちば まきもてる をすずもゆらに たわやめに われはあれども ひきよぢて えだもとををに ふさたをり わはもちてゆく きみがかざしに
[左注] (右二首)
[校異] 鐘→鍾 [天][類][紀] / <>→之 [西(左書)][元][天][類] / 邙→五十 [万葉考] / 父→文 [元][天][紀]
[事項] 雑歌 動物 枕詞 神祭り 寿歌 秋 植物 宴席 三輪山 地名
[訓異] かむとけの,[寛]かみとけの, **そらの,[寛]ひかるみそらの, ながつきの,[寛]なかつきの, しぐれのふれば,[寛]しくれのふれは, かりがねも,[寛]かりかねも, いまだきなかぬ,[寛]いまたきなかす, かむなびの,[寛]かみなひの, ももたらず,[寛]ももたらす, いつきのえだに,[寛]みそのつきえに, みづえさす,[寛]みつえさす, あきのもみちば,[寛]あきのもみちは, まきもてる,[寛]まさけもち, をすずもゆらに,[寛]をすすもゆらに, われはあれども,[寛]われはあれとも, ひきよぢて,[寛]ひきよちて, えだもとををに,[寛]みねもとををに, ふさたをり,[寛]うちたをり, わはもちてゆく,[寛]われはもてゆき, きみがかざしに,[寛]きみかかさしに,
   
  鹿持訓訂/3223
(訓訂) 天霧(あまぎ)らひ 渡る日隠し 九月(ながつき)の 時雨の降れば
雁がねも 乏(とも)しく来鳴く 神奈備の 清き御田屋(みたや)の
垣つ田の 池の堤の 百(もも)足らず 斎槻(いつき)が枝に
瑞枝(みづえ)さす 秋のもみち葉 まき持たる 小鈴(をすず)もゆらに
手弱女(たわやめ)に 吾(あれ)はあれども 引き攀ぢて 枝もとををに
打ち手折り 吾(あ)は持ちてゆく 君が挿頭(かざし)に
   

行靡闕矣

 
[歌番号] 13/3242
[題詞] なし
[原文] 百岐年 三野之國之 高北之 八十一隣之宮尓 日向尓 行靡闕矣 有登聞而 吾通<道>之 奥十山 <三>野之山 <靡>得 人雖跡 如此依等 人雖衝 無意山之 奥礒山 三野之山
[訓読] ももきね 美濃の国の 高北の くくりの宮に 日向ひに 行靡闕矣 ありと聞きて 我が行く道の 奥十山 美濃の山 靡けと 人は踏めども かく寄れと 人は突けども 心なき山の 奥十山 美濃の山
[仮名] ももきね みののくにの たかきたの くくりのみやに ひむかひに ******* ありとききて わがゆくみちの おきそやま みののやま なびけと ひとはふめども かくよれと ひとはつけども こころなきやまの おきそやま みののやま
[左注] 右一首
[校異] 道 [西(上書訂正)][元][天][紀] / <>→三 [西(右書)][元][天][紀] / 靡 [西(上書訂正)][元][天][紀]
[事項] 雑歌 枕詞 地名 岐阜 羈旅 旅愁 難訓 景行天皇
[訓異] ももきね,[寛]ももくきね, *******,[寛]ゆきなひかくを, わがゆくみちの,[寛]わかかよひちの, なびけと,[寛]なひかすと, ひとはふめども,[寛]ひとはふめとも, ひとはつけども,[寛]ひとはつけとも,
   
  鹿持訓訂/3242
(訓訂) ももづたふ 美濃(みぬ)の国の 高北の 泳(くくり)の宮に
月に日に 行かまし里を ありと聞きて 我が通ひ道(ぢ)の
大吉蘇山(おきそやま) 美濃の山 靡けと 人は踏めども
かく寄れと 人は衝(つ)けども 心なき 山の 大吉蘇山 美濃の山
   

蒙沾鴨

 
[歌番号] 13/3315
[題詞] 反歌
[原文] 泉<川> 渡瀬深見 吾世古我 旅行衣 蒙沾鴨
[訓読] 泉川渡り瀬深み我が背子が旅行き衣ひづちなむかも
[仮名] いづみがは わたりぜふかみ わがせこが たびゆきごろも ひづちなむかも
[左注] (右四首)
[校異] 河→川 [元][天][類]
[事項] 問答 地名 京都 木津川 女歌 恋愛
[訓異] いづみがは,[寛]いつみかは, わたりぜふかみ,[寛]わたるせふかみ, わがせこが,[寛]わかせこか, たびゆきごろも,[寛]たひゆくころも, ひづちなむかも,[寛]*****かも,
   
  鹿持訓訂/3315
(訓訂) 泉川渡り瀬深み我が背子が旅行き衣(ごろも)裳(も)濡らさむかも
   

奈可中次下

 
[歌番号] 14/3419
[題詞] なし
[原文] 伊可保世欲 奈可中次下 於毛比度路 久麻許曽之都等 和須礼西奈布母
[訓読] 伊香保せよ奈可中次下思ひどろくまこそしつと忘れせなふも
[仮名] いかほせよ ******* おもひどろ くまこそしつと わすれせなふも
[左注] (右廿二首上野國歌)
[校異] 次 [元][類][古] 吹
[事項] 東歌 相聞 群馬県 地名 難訓 恋情
[訓異] *******,[寛]なかなかしなに, おもひどろ,[寛]おもひとろ,
   
  鹿持訓訂/3419
(訓訂) 伊香保夫(せ)よ奈可中次下思ひどろくまこそしつと忘れせなふも
(左注) 右の二十二首(はたちまりふたうた)は、上野(かみつけぬ)の国の歌。
(左注) (この歌の2つ後に)右の二首は、下野(しもつけぬ)の国の歌。
   

過所奈之尓 多我子尓毛

 
[歌番号] 15/3754
[題詞] (中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)
[原文] 過所奈之尓 世伎等婢古由流 保等登藝須 多我子尓毛 夜麻受可欲波牟
[訓読] 過所なしに関飛び越ゆる霍公鳥多我子尓毛止まず通はむ
[仮名] くゎそなしに せきとびこゆる ほととぎす ******* やまずかよはむ
[左注] (右十三首中臣朝臣宅守)
[校異] なし
[事項] 作者:中臣宅守 天平12年 年紀 贈答 恋情 悲別 女歌 難訓 動物 狭野弟上娘子
[訓異] くゎそなしに,[寛]ひまなしに, せきとびこゆる,[寛]せきとひこゆる, ほととぎす,[寛]ほとときす, *******,[寛]あまたかこにも, やまずかよはむ,[寛]やますかよはむ,
   
  鹿持訓訂/3754
(訓訂) 過所(ふた)なしに関飛び越ゆる霍公鳥(ほととぎす)我が身にもがも止まず通はむ
(左注) 右の十三首(とをまりみうた)は、配所より中臣朝臣宅守が贈れる歌。
   

刺部重部 信巾裳成者之寸丹取為支屋所經 所為故為 所為故為

 
[歌番号] 16/3791
[題詞] 昔有老翁 号曰竹取翁也 此翁季春之月登丘遠望 忽値煮羮之九箇女子也 百嬌無儔花容無止 于時娘子等呼老翁嗤曰 叔父来乎 吹此燭火也 於是翁曰唯<々> 漸趍徐行著接座上 良久娘子等皆共含咲相推譲之曰 阿誰呼此翁哉尓乃竹取翁謝之曰 非慮之外偶逢神仙 迷惑之心無敢所禁 近狎之罪希贖以歌 即作歌一首[并短歌]
[原文] 緑子之 若子蚊見庭 垂乳為 母所懐 褨襁 平<生>蚊見庭 結經方衣 水津裏丹縫服 頚著之 童子蚊見庭 結幡 袂著衣 服我矣 丹因 子等何四千庭 三名之綿 蚊黒為髪尾 信櫛持 於是蚊寸垂 取束 擧而裳纒見 解乱 童兒丹成見 羅丹津蚊經 色丹名著来 紫之 大綾之衣 墨江之 遠里小野之 真榛持 丹穂之為衣丹 狛錦 紐丹縫著 刺部重部 波累服 打十八為 麻續兒等 蟻衣之 寶之子等蚊 打栲者 經而織布 日曝之 朝手作尾 信巾裳成者之寸丹取為支屋所經 稲寸丁女蚊 妻問迹 我丹所来為 彼方之 二綾裏沓 飛鳥 飛鳥壮蚊 霖禁 縫為黒沓 刺佩而 庭立住 退莫立 禁尾迹女蚊 髣髴聞而 我丹所来為 水縹 絹帶尾 引帶成 韓帶丹取為 海神之 殿盖丹 飛翔 為軽如来 腰細丹 取餝氷 真十鏡 取雙懸而 己蚊果 還氷見乍 春避而 野邊尾廻者 面白見 我矣思經蚊 狭野津鳥 来鳴翔經 秋僻而 山邊尾徃者 名津蚊為迹 我矣思經蚊 天雲裳 行田菜引 還立 路尾所来者 打氷<刺> 宮尾見名 刺竹之 舎人壮裳 忍經等氷 還等氷見乍 誰子其迹哉 所思而在 如是 所為故為 古部 狭々寸為我哉 端寸八為 今日八方子等丹 五十狭邇迹哉 所思而在 如是 所為故為 古部之 賢人藻 後之世之 堅監将為迹 老人矣 送為車 持還来 <持還来>
[訓読] みどり子の 若子髪には たらちし 母に抱かえ ひむつきの 稚児が髪には 木綿肩衣 純裏に縫ひ着 頚つきの 童髪には 結ひはたの 袖つけ衣 着し我れを 丹よれる 子らがよちには 蜷の腸 か黒し髪を ま櫛持ち ここにかき垂れ 取り束ね 上げても巻きみ 解き乱り 童になしみ さ丹つかふ 色になつける 紫の 大綾の衣 住吉の 遠里小野の ま榛持ち にほほし衣に 高麗錦 紐に縫ひつけ 刺部重部 なみ重ね着て 打麻やし 麻続の子ら あり衣の 財の子らが 打ちし栲 延へて織る布 日さらしの 麻手作りを 信巾裳成者之寸丹取為支屋所経 稲置娘子が 妻どふと 我れにおこせし 彼方の 二綾下沓 飛ぶ鳥 明日香壮士が 長雨禁へ 縫ひし黒沓 さし履きて 庭にたたずみ 退けな立ち 禁娘子が ほの聞きて 我れにおこせし 水縹の 絹の帯を 引き帯なす 韓帯に取らし わたつみの 殿の甍に 飛び翔ける すがるのごとき 腰細に 取り装ほひ まそ鏡 取り並め懸けて おのがなり かへらひ見つつ 春さりて 野辺を廻れば おもしろみ 我れを思へか さ野つ鳥 来鳴き翔らふ 秋さりて 山辺を行けば なつかしと 我れを思へか 天雲も 行きたなびく かへり立ち 道を来れば うちひさす 宮女 さす竹の 舎人壮士も 忍ぶらひ かへらひ見つつ 誰が子ぞとや 思はえてある かくのごと 所為故為 いにしへ ささきし我れや はしきやし 今日やも子らに いさとや 思はえてある かくのごと 所為故為 いにしへの 賢しき人も 後の世の 鑑にせむと 老人を 送りし車 持ち帰りけり 持ち帰りけり
[仮名] みどりこの わかごかみには たらちし ははにむだかえ ひむつきの ちごがかみには ゆふかたぎぬ ひつらにぬひき うなつきの わらはかみには ゆひはたの そでつけごろも きしわれを によれる こらがよちには みなのわた かぐろしかみを まくしもち ここにかきたれ とりつかね あげてもまきみ ときみだり わらはになしみ さにつかふ いろになつける むらさきの おほあやのきぬ すみのえの とほさとをのの まはりもち にほほしきぬに こまにしき ひもにぬひつけ ***** なみかさねきて うちそやし をみのこら ありきぬの たからのこらが うちしたへ はへておるぬの ひさらしの あさてづくりを ***** ******* ***** いなきをとめが つまどふと われにおこせし をちかたの ふたあやしたぐつ とぶとり あすかをとこが ながめさへ ぬひしくろぐつ さしはきて にはにたたずみ そけなたち いさめをとめが ほのききて われにおこせし みはなだの きぬのおびを ひきおびなす からおびにとらし わたつみの とののいらかに とびかける すがるのごとき こしほそに とりよそほひ まそかがみ とりなめかけて おのがなり かへらひみつつ はるさりて のへをめぐれば おもしろみ われをおもへか さのつとり きなきかけらふ あきさりて やまへをゆけば なつかしと われをおもへか あまくもも ゆきたなびく かへりたち みちをくれば うちひさす みやをみな さすたけの とねりをとこも しのぶらひ かへらひみつつ たがこぞとや おもはえてある かくのごと ******* いにしへ ささきしわれや はしきやし けふやもこらに いさとや おもはえてある かくのごと ******* いにしへの さかしきひとも のちのよの かがみにせむと おいひとを おくりしくるま もちかへりけり もちかへりけり
[左注] なし
[校異] 唯→々 [類][矢][京] / 歌 [西] 謌 / 生之→生 [紀][細] / 判→刺 [尼][類][紀] / <>→持還来 [尼]
[事項] 雑歌 歌物語 物語 作者:竹取翁 神仙 枕詞 難訓 植物 地名 堺市 大阪 教訓 嘆老
[訓異] みどりこの,[寛]みとりこの, わかごかみには,[寛]わかこかみには, たらちし,[寛]たらちしの, ははにむだかえ,[寛]ははにいたかれ, ひむつきの,[寛]たまたすき, ちごがかみには,[寛]はふこかみには, ゆふかたぎぬ,[寛]むすふかたきぬ, ひつらにぬひき,[寛]ひつりにぬひき, うなつきの,[寛]たひつきの, わらはかみには,[寛]うなひこかみには, ゆひはたの,[寛]ゆふはたの, そでつけごろも,[寛]そてつきころも, こらがよちには,[寛]こらかよちには, みなのわた,[寛]みなしつらなる, かぐろしかみを,[寛]かくろなるかみを, ここにかきたれ,[寛]ここにかきたる, あげてもまきみ,[寛]あけてもまきみ, ときみだり,[寛]ときみたれ, わらはになしみ,[寛]うなひこになれる, さにつかふ,[寛]みつらにつかふる, いろになつける,[寛]いろになつけくる, おほあやのきぬ,[寛]おほあやのころも, まはりもち,[寛]まはきもて, *****,[寛]さしへかさね, なみかさねきて,[寛]へなみかさねきて, うちそやし,[寛]うちそはし, たからのこらが,[寛]たからのこらか, うちしたへ,[寛]うつたへは, はへておるぬの,[寛]へてをるぬのを, ひさらしの,[寛]ひにさらし, あさてづくりを,[寛]あさてつくらひ, *****,[寛]しきもなせは, *******,[寛]しきにとりしき, *****,[寛]やとにへて, いなきをとめが,[寛]いねすをとめか, つまどふと,[寛]つまとふと, われにおこせし,[寛]われにそきにし, ふたあやしたぐつ,[寛]ふたあやうらくつ, とぶとり,[寛]とふとりの, あすかをとこが,[寛]あすかをとこか, ながめさへ,[寛]なかめいみ, ぬひしくろぐつ,[寛]ぬひしくろくつ, にはにたたずみ,[寛]にはにたたすみ, そけなたち,[寛]いてなたち, いさめをとめが,[寛]いさむをとめか, われにおこせし,[寛]われにそこし, みはなだの,[寛]みはなたの, きぬのおびを,[寛]きぬのおひを, ひきおびなす,[寛]ひきおひなれる, からおびにとらし,[寛]からおひにとらし, とののいらかに,[寛]とののみさかに, とびかける,[寛]とひかける, すがるのごとき,[寛]すかるのことき, とりよそほひ,[寛]とりてかさらひ, まそかがみ,[寛]まそかかみ, とりなめかけて,[寛]とりなみかけて, おのがなり,[寛]おのかみの, のへをめぐれば,[寛]のへをめくれは, われをおもへか,[寛]われをおもふか, あきさりて,[寛]あきさけて, やまへをゆけば,[寛]やまへをゆけは, われをおもへか,[寛]われをおもふか, ゆきたなびく,[寛]ゆきたなひき, みちをくれば,[寛]みちをくるには, みやをみな,[寛]みやをみてもな, しのぶらひ,[寛]しのふらひ, たがこぞとや,[寛]たかこそとや, おもはえてある,[寛]おもひてあらむ, かくのごと,[寛]かく, *******,[寛]そしこし, いにしへ,[寛]いにしへの, けふやもこらに,[寛]いふやもこらに, いさとや,[寛]いさにとや, おもはえてある,[寛]おもひてあらむ, かくのごと,[寛]かく, *******,[寛]そしこし, さかしきひとも,[寛]かしこきひとも, かがみにせむと,[寛]かたみにせむと, おいひとを,[寛]おひひとを, もちかへりけり,[寛]もてかへりこね, もちかへりけり,
   
  鹿持訓訂/3791
(題詞) 昔老翁(おきな)有り、竹取(たかとり)の翁をぢといふ。此の翁、季春之月(やよひばかり)に、丘に登りて遠望(くにみ)するとき、羮(あつもの)を煮る九箇(ここの)女子(をとめ)に値(あ)へりき。百(もも)の嬌(こび)儔(たぐ)ひ無く、花の容(すがた)止(ならび)無し。時に娘子等、老翁(をぢ)を呼び、嗤ひて「叔父来て此の鍋火(ひ)を吹け」と曰ふ。ここに翁、「唯々(をを)」と曰ひて、漸(やや)ゆきて、座(しきゐ)の上(ほとり)に著接(つ)きたりき。しまらくありて娘子等、皆共に含咲(したゑ)み、相推し譲りけらく、「誰(たれ)そ此の翁を呼びし」。すなはち竹取の翁のいふ、「非慮(おもひ)の外に神仙(ひじり)に偶逢(あ)ひ、迷惑(まど)へる心敢(た)へがたし。近く狎れし罪、謌を以(もち)て贖(あがな)ひまをさむ」。即ち作(よ)める歌一首(ひとつ)、また短歌(みじかうた)
   
(訓訂) 緑子の 若子(わくご)髪には たらちし 母に抱(うだ)かえ
すきかくる 這ふ子が身には 木綿肩衣 純裏(ひつら)に縫ひ着
頚(くび)つきの 童(わらは)が身には 結ひはたの 袖つけ衣 着し我を
吾(あ)に寄る子らが 同輩(よち)には 蜷(みな)の腸(わた) か黒し髪を
真櫛持ち 肩にかき垂れ 取り束(たが)ね 上げても纏(ま)きみ
解き乱し 童に成しみ 紅の 丹つかふ色に  馴付(なつ)かしき 紫の 大綾の衣
住吉(すみのえ)の 遠里(をり)の小野の 真榛(はり)もち にほしし衣に
高麗(こま)錦 紐に縫ひつけ ささへ重なへ なみ重ね着
打麻(うつそ)やし 麻続(をみ)の子ら あり衣の 宝の子らが
打栲(うつたへ) 延へて織る布 日さらしの 麻手作りを
重裳(しきも)なす 重(しき)に取り敷き ほころへる 稲置娘子(いなきをとめ)が
妻問ふと 吾(あ)にそ賜(たば)りし 彼方(うきかた)の 二綾下沓(ふたやしたくつ)
飛ぶ鳥の 飛鳥壮士(をとこ)が 長雨(ながめ)忌み 縫ひし黒沓(くりくつ)
さし履きて 庭に立ち 往きもとほれば 母刀自(おもとじ)の 守(も)らす娘子が
ほの聞きて 吾(あ)にそ賜りし 水縹(みはなだ)の 絹の帯を
引帯(ひこび)なす 韓帯(かろび)に取らし わたつみの 殿の甍に
飛び翔ける すがるの如き 腰細に 取り飾らひ
真澄鏡 取り並め懸けて おのが顔 還らひ見つつ
春さりて 野辺を廻(めぐ)れば 面白み 吾(あれ)を思へか
さ野つ鳥 来鳴き翔らふ 秋さりて 山辺を行けば
なつかしと 吾(あれ)を思へか 天雲も い行き棚引き
還り立ち 路(おほち)を来(け)れば うち日さす 宮女(みやをみな)
刺竹(さすだけ)の 舎人壮士も 忍ふらひ 還らひ見つつ
誰が子そとや 思はれてある かくそしこし
古の ささきし吾(あれ)や はしきやし 今日やも子らに
いさにとや 思はれてある かくそしこし
古の 賢しき人も 後の世の 鑑(かがみ)にせむと
老人(おいひと)を 送りし車 持ち帰り来(こ)し
   

非左思所念

 
[歌番号] 16/3889
[題詞] (怕物歌三首)
[原文] 人魂乃 佐青有<公>之 但獨 相有之雨夜<乃> 葉非左思所念
[訓読] 人魂のさ青なる君がただひとり逢へりし雨夜の葉非左し思ほゆ
[仮名] ひとたまの さをなるきみが ただひとり あへりしあまよの ***しおもほゆ
[左注] なし
[校異] 君→公 [類][古][紀] / <>→乃 [尼][類][古]
[事項] 雑歌 難訓 恐怖 宴席 誦詠
[訓異] さをなるきみが,[寛]さをなるきみか, ただひとり,[寛]たたひとり, あへりしあまよの,[寛]あへりしあまよは, ***しおもほゆ,[寛]ひさしとそおもふ,
   
  鹿持訓訂/3889
(題詞) 怕(おどろ)しき物の歌三首
(訓訂) 人魂(ひとたま)のさ青(を)なる君が唯独り逢へりし雨夜は久しく思ほゆ
   

牟賀思久母安流香

 
[歌番号] 18/4105
[題詞] (為贈京家願真珠歌一首[并短歌])
[原文] 思良多麻能 伊保都追度比乎 手尓牟須妣 於許世牟安麻波 牟賀思久母安流香 [一云 我家牟伎波母]
[訓読] 白玉の五百つ集ひを手にむすびおこせむ海人はむがしくもあるか [一云 我家牟伎波母]
[仮名] しらたまの いほつつどひを てにむすび おこせむあまは むがしくもあるか [*******]
[左注] 右五月十四日大伴宿祢家持依興作
[校異] なし
[事項] 天平感宝1年5月14日 作者:大伴家持 年紀 贈答 高岡 富山 異伝 推敲 難訓
[訓異] いほつつどひを,[寛]いほつつとひを, てにむすび,[寛]てにむすひ, むがしくもあるか,[寛]むかしくもあるか, [*******]
   
  鹿持訓訂/4105
(題詞) (反し歌四首)
(訓訂) 白玉の五百いほつ集ひを手にむすび遣おこせむ海人は喜むがしくもあるか
(左注) 右、五月の十四日、大伴宿禰家持が興ことに依つけてよめる。