枕草子152段 人ばへするもの

うつくし 枕草子
中巻中
152段
人ばへ
名おそろし

(旧)大系:152段
新大系:145段、新編全集:146段
(以上全て三巻本系列本。しかし後二本の構成は2/3が一致せず混乱を招くので、以後、三巻本理論の根本たる『(旧)大系』に準拠すべきと思う)
(旧)全集=能因本:156段
 


 
 人ばへするもの ことなることなき人の子の、さすがにかなしうしならはしたる。しはぶき。はづかしき人にものいはむとするに、先に立つ。
 

 あなたこなたに住む人の子の四つ五つなるは、あやにくだちて、ものとり散らしそこなふを、ひきはられ制せられて、心のままにもえあらぬが、親の来たるに所得て、「あれ見せよ。やや、はは」などひきゆるがすに、大人どものいふとて、ふと聞き入れねば、手づからひきさがし出でて見さわぐこそ、いとにくけれ。それを、「まな」ともとり隠さで、「さなせそ」「そこなふな」などばかり、うち笑みいふこそ、親もにくけれ。我はた、えはしたなうもいはで見るこそ心もとなけれ。
 
 

うつくし 枕草子
中巻中
152段
人ばへ
名おそろし