枕草子194段 大路近なる所にて聞けば

南ならずは 枕草子
中巻下
194段
大路近なる
ふと心劣り

(旧)大系:194段
新大系:185段、新編全集:185段
(以上全て三巻本系列本。しかし後二本の構成は2/3が一致せず混乱を招くので、以後最も索引性に優れる三巻本理論の根本たる『(旧)大系』に準拠すべきと思う)
(旧)全集=能因本:ナシ
 


 
 大路近なる所にて聞けば、車に乗りたる人の、有明のをかしきに簾あげて、「遊子はなほ残りの月に行く」といふ詩を、声よくて誦したるもをかし。
 

 馬にても、さやうの人の行くはをかし。さやうの所にて聞くに、泥障の音の聞ゆるを、いかなる者ならむと、するわざもうち置きて見るに、あやしの者を見つけたる、いとねたし。
 
 

南ならずは 枕草子
中巻下
194段
大路近なる
ふと心劣り