源氏物語 蓬生:巻別和歌6首・逐語分析

澪標 源氏物語
和歌一覧
各巻別内訳
15帖 蓬生
関屋

 
 源氏物語・蓬生(よもぎう)巻の和歌6首を抜粋一覧化し、現代語訳と歌い手を併記、原文対訳の該当部と通じさせた。

 

 内訳:3(末摘)、2(源氏)、1(侍従)※最初最後
 

蓬生・和歌の対応の程度と歌数
和歌間の文字数
即答 0  40字未満
応答 0  40~100字未満
対応 4首  ~400~1000字+対応関係文言
単体 2首  単一独詠・直近非対応

※分類について和歌一覧・総論部分参照。

 

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 上下の句に分割したバージョン。見やすさに応じて。
 なお、付属の訳はあくまで通説的理解の一例なので、訳が原文から離れたり対応していない場合、より精度の高い訳を検討されたい。
 


  原文
(定家本校訂)
現代語訳
(渋谷栄一)
265
絶ゆまじ
筋を頼みし
玉かづら
思ひのほかに
かけ離れぬる
〔末摘花〕あなたを絶えるはずのない
間柄だと信頼していましたが

思いのほかに
遠くへ行ってしまうのですね
266
玉かづら
絶え
てもやまじ
行く道の
手向の
かけて誓はむ
〔侍従〕
お別れしましてもお見捨て申しません
行く道々の
道祖神に
かたくお誓いしましょう
267
亡き人を
恋ふる袂の
ひまなきに
荒れたる軒の
しづくさへ添ふ
〔末摘花〕亡き父上を
恋い慕って泣く涙で袂の
乾く間もないのに
荒れた軒の
雨水までが降りかかる
268
尋ねても
我こそ訪はめ
道もなく
深き
もとの心を
〔源氏〕誰も訪ねませんが
わたしこそは訪問しましょう
道もないくらい
深く茂った蓬の
宿の姫君の変わらないお心を
269
藤波の
うち過ぎがたく
見えつるは
松こそ宿
しるしなりけれ
〔源氏〕松にかかった藤の花を
見過ごしがたく
思ったのは
その松がわたしを待つというあなたの家の
目じるしであったのですね
270
年を経て
待つしるしなき
わが宿
花のたよりに
過ぎぬばかりか
〔末摘花〕長年
待っていた甲斐のなかった
わたしの宿を
あなたはただ藤の花を御覧になる
ついでにお立ち寄りになっただけなのですね