徒然草193段 くらき人:原文

神、仏にも 徒然草
第五部
193段
くらき人
達人

 
 くらき人の、人を測りて、その智を知れりと思はん、さらに当たるべからず。
 

 つたなき人の、碁打つ事ばかりにさとく、巧みなるは、賢き人の、この芸におろかなるを見て己れが智に及ばずと定めて、よろづの道の匠、我が道を人の知らざるを見て、己れすぐれたりと思はん事、大きなる誤りなるべし。
文字の法師、暗証の禅師、互ひに測りて、己れに如かずと思へる、ともに当たらず。
 

 己れが境界にあらざるものをば、争ふべからず、是非すべからず。