奥の細道 和歌・俳句一覧

題名論 奥の細道
俳句一覧
全文

 
 『奥の細道(おくのほそ道)』和歌・俳句一覧、66首。和歌は西行の1首。
 
 段数(話数)も44と見て66と見る(89の和歌を上下の句で分割)。

 「竪横の 五尺にたらぬ 草の庵」

 「結ぶもくやし 雨なかりせば」

 これは何気なく見ると一つの和歌だが、直後に「松の炭して岩に書き付け」とあり、これで十中八九、下の句を別人が書いたであろうことが解る。

 つまりこの二首は伊勢物語69段・狩の使「続松の炭して歌の末を書きつぐ」に由来したものと解される(芭蕉が歌番を意識したかは不明だが、10番目の句も同じ雲巌寺で括られており、偶然にしては良くできているので意図したと見たい。三首は日光・雲巌寺・平泉の三か所だけ)。

 伊勢物語は一般に209首とカウントされるが、69段の続松の句を上下別々と数えると(男女別々の和歌なので)210首になり、切りが良くなる。

 また本作では、信夫の里・石巻で、それぞれ伊勢物語の句「(陸奥の)しのぶもぢ摺り」(初冠)、「姉歯の松」(陸奥の国)が引用されている。
 

目次と配置(66首)
1
草の戸も
2
行く春や
3
あらたふと
4
剃り捨てて
曾良
5
しばらくは
6
かさねとは
曾良
7
夏山に
8
竪横の
9
結ぶもくやし
10
木啄も
11
野を横に
12
田一枚
13
卯の花を
曾良
14
風流の
15
世の人の
16
早苗とる
17
笈も太刀も
18
笠島は
19
武隈の
20
桜より
21
あやめ草
22
松島や
曾良
23
夏草や
24
卯の花に
曾良
25
五月雨の
26
蚤虱
27
涼しさを
28
這ひ出でよ
29
眉掃きを
30
蚕飼ひする
曾良
31
閑かさや
32
五月雨を
33
ありがたや
34
淋しさや
35
雲の峰
36
語られぬ
37
湯殿山
曾良
38
あつみ山や
39
暑き日を
40
象潟や
41
汐越や
42
象潟や
曾良
43
蜑の家や
低耳
44
波越えぬ
曾良
45
文月や
46
荒海や
47
一つ家に
48
早稲の香や
49
塚も動け
50
秋涼し
51
あかあかと
52
しをらしき
53
むざんやな
54
石山の
55
山中や
56
行き行きて
曾良
57
今日よりは
58
よもすがら
59
庭掃きて
60
よもすがら
西行
61
物書きて
62
月清し
63
名月や
64
寂しさや
65
波の間や
66
蛤の
 

 和歌俳句の配置
 
1 門出 2   23 尿前の関 1
2 草加 -   24 尾花沢 4
3 室の八島 -   25 立石寺 1
4 日光 3   26 最上川 1
5 那須野 1   27 出羽三山 5
6 黒羽 1   28 酒田 2
7 雲巌寺 3   29 象潟 5
8 殺生石 2   30 越後路 2
9 白河の関 1   31 市振 1
10 須賀川 2   32 越中路 1
11 信夫の里 1   33 金沢 4
12 飯塚の里 1   34 多太神社 1
13 笠島 1   35 山中 2
14 武隈の松 2   36 別離 2
15 宮城野 1   37 全昌寺 2
16 壺の碑 -   38 汐越の松:西行 1
17 末の松山 -   39 天龍寺 1
18 塩竃 -   40 福井 -
19 松島 1   41 敦賀 2
20 瑞巌寺 -   42 種の浜 2
21 石巻 -   43 大垣 1
22 平泉 3   44 -

 

 
 

門出

 
1 草の戸も 住み替はる代ぞ 雛の家  
2 行く春や 鳥啼き魚の 目は涙  
 
 

草加

 
 
 

室の八島

 
 
 

日光

 
3 あらたふと 青葉若葉の 日の光  
4 剃り捨てて 黒髪山に 衣更 曾良
5 しばらくは 滝にこもるや 夏の初め  
 
 

那須野

 
6 かさねとは 八重撫子の 名なるべし 曾良
 
 

黒羽

 
7 夏山に 足駄を拝む 首途かな  
 
 

雲巌寺

 
8 竪横の 五尺にたらぬ 草の庵  
9 結ぶもくやし 雨なかりせば  
10 木啄も 庵は破らず 夏木立  
 
 

殺生石・遊行柳

 
11 野を横に 馬引き向けよ ほととぎす  
12 田一枚 植ゑて立ち去る 柳かな  
 
 

白河の関

 
13 卯の花を かざしに関の 晴れ着かな 曾良
 
 

須賀川

 
14 風流の 初めや奥の 田植歌  
15 世の人の 見付けぬ花や 軒の栗  
 
 

信夫の里

 
16 早苗とる 手もとや昔 しのぶ摺り  
 
 

飯塚の里

 
17 笈も太刀も 五月に飾れ 紙幟  
 
 

笠島

 
18 笠島は いづこ五月の ぬかり道  
 
 

武隈の松

 
19 武隈の 松見せ申せ 遅桜  
20 桜より 松は二木を 三月越し  
 
 

仙台・宮城野

 
21 あやめ草 足に結ばん 草鞋の緒  
 
 

壺の碑

 
 
 

末の松山

 
 
 

塩竃

 
 
 

松島

 
22 松島や 鶴に身を借れ ほととぎす 曾良
 
 

瑞巌寺

 
 
 

石巻

 
 
 

平泉

 
23 夏草や つはものどもが 夢の跡  
24 卯の花に 兼房見ゆる 白毛かな 曾良
25 五月雨の 降り残してや 光堂  
 
 

尿前の関

 
26 蚤虱 馬の尿する 枕もと  
 
 

尾花沢

 
27 涼しさを わが宿にして ねまるなり  
28 這ひ出でよ 飼屋が下の 蟇の声  
29 眉掃きを 俤にして 紅粉の花  
30 蚕飼ひする 人は古代の 姿かな 曾良
 
 

立石寺

 
31 閑かさや 岩にしみ入る 蝉の声  
 
 

最上川

 
32 五月雨を あつめて早し 最上川  
 
 

出羽三山

 
33 ありがたや 雪をかをらす 南谷  
34 淋しさや ほの三月の 羽黒山  
35 雲の峰 いくつ崩れて 月の山  
36 語られぬ 湯殿にぬらす 袂かな  
37 湯殿山 銭踏む道の 涙かな 曾良
 
 

酒田

 
38 あつみ山や 吹浦かけて 夕涼み  
39 暑き日を 海に入れたり 最上川  
 
 

象潟

 
40 象潟や 雨に西施が ねぶの花  
41 汐越や 鶴はぎぬれて 海涼し  
42 象潟や 料理何食ふ 神祭 曾良
43 蜑の家や 戸板を敷きて 夕涼み 低耳
44 波越えぬ 契りありてや みさごの巣 曾良
 
 

越後路

 
45 文月や 六日も常の 夜には似ず  
46 荒海や 佐渡に横たふ 天の河  
 
 

市振

 
47 一つ家に 遊女も寝たり 萩と月  
 
 

越中路

 
48 早稲の香や 分け入る右は 有磯海  
 
 

金沢

 
49 塚も動け 我が泣く声は 秋の風  
50 秋涼し 手ごとにむけや うりなすび  
51 あかあかと 日はつれなくも 秋の風  
52 しをらしき 名や小松 吹く萩薄  
 
 

多太神社

 
53 むざんやな 甲の下の きりぎりす  
 
 

山中

 
54 石山の 石より白し 秋の風  
55 山中や 菊はたをらぬ 湯の匂ひ  
 
 

別離

 
56 行き行きて 倒れ伏すとも 萩の原 曾良
57 今日よりは 書付消さん 笠の露  
 
 

全昌寺

 
58 よもすがら 秋風聞くや 裏の山  
59 庭掃きて 出でばや寺に 散る柳  
 
 

汐越の松

 
60 よもすがら 嵐に波を 運ばせて
 月を垂れたる 汐越の松
西行
 
 

天龍寺

 
61 物書きて 扇引きさく なごりかな  
 
 

福井

 
 
 

敦賀

 
62 月清し 遊行の持てる 砂の上  
63 名月や 北国日和 定めなき  
 
 

種の浜

 
64 寂しさや 須磨に勝ちたる 浜の秋  
65 波の間や 小貝にまじる 萩の塵  
 
 

大垣

 
66 蛤の ふたみに別れ 行く秋ぞ