枕草子141段 とり所なきもの

つれづれなぐさむ 枕草子
中巻上
141段
とり所なき
なほめでたき

(旧)大系:141段
新大系:134段、新編全集:135段
(以上全て三巻本系列本。しかし後二本の構成は2/3が一致せず混乱を招くので、以後、三巻本理論の根本たる『(旧)大系』に準拠すべきと思う)
(旧)全集=能因本:144段
 


 
 とり所なきもの かたちにくさげに、心あしき人。みそひめのぬりたる。
 これいみじう、よろづの人のにくむなる物とて、いまとどむべきにあらず。
 また、あと火の火箸といふこと、などてか、世になきことならねど、この草子を、人の見るべきものと思はざりしかば、あやしきことも、にくきことも、ただ思ふことを書かむと思ひしなり。