源氏物語 横笛:巻別和歌8首・逐語分析

柏木 源氏物語
和歌一覧
各巻別内訳
37帖 横笛
鈴虫

 
 源氏物語・横笛巻の和歌8首を抜粋一覧化し、現代語訳と歌い手を併記、原文対訳の該当部と通じさせた。

 

 内訳:2(夕霧)、1×6(朱雀院=源氏異母兄、女三宮=朱雀娘、落葉宮=柏木妻、一条御息所=落葉の母、柏木)※最初最後
 

横笛・和歌の対応の程度と歌数
和歌間の文字数
即答 4首  40字未満
応答 0  40~100字未満
対応 2首  ~400~1000字+対応関係文言
単体 2首  単一独詠・直近非対応

※分類について和歌一覧・総論部分参照。

 

→【PC向け表示
 上下の句に分割したバージョン。見やすさに応じて。

 なお、付属の訳はあくまで通説的理解の一例なので、訳が原文から離れたり対応していない場合、より精度の高い訳を検討されたい。
 


  原文
(定家本校訂)
現代語訳
(渋谷栄一)
512
を別れ
入りなむ道は
おくるとも
同じところを
君も尋ねよ
〔朱雀院〕この世を捨てて
お入りになった道は
わたしより遅くとも
同じ極楽浄土を
あなたも求めて来て下さい
513
憂き世には
あらぬところの
ゆかしくて
背く山路に
思ひこそ入れ
〔女三宮=朱雀娘〕こんな辛い世の中とは
違う所に
住みたくて
わたしも父上と同じ山寺に
入りとうございます
514
憂き節も
忘れずながら
呉竹の
こは捨て難き
ものにぞありける
〔源氏〕いやなことは
忘れられないが
この子はかわいくて
捨て難く
思われることだ
515
ことに出でて
言はぬも言ふに
まさるとは
人に恥ぢたる
けしきをぞ見る
〔夕霧〕言葉に出して
おっしゃらないのも、
おっしゃる以上に深いお気持ちなのだと、
慎み深い
態度からよく分かります
516
深き夜の
あはればかりは
聞きわけど
ことより顔に
えやは弾きける
〔落葉宮:柏木妻〕趣深い秋の夜の
情趣は
ぞんじておりますが、
靡き顔に
琴をお弾き申したでしょうか
517
露しげき
むぐらの宿
いにしへ
秋に変はらぬ
虫の声かな
〔一条御息所:落葉の母〕涙にくれています
この荒れた家に
昔の
秋と変わらない
笛の音を聞かせて戴きました
518
横笛
調べはことに
変はらぬ
むなしくなりし
こそ尽きせね
〔夕霧〕横笛の
音色は特別
昔と変わりませんが
亡くなった人を
悼む泣き声は尽きません
519
竹に
吹き寄る風の
ことならば
末の世長き
に伝へなむ
〔柏木〕この笛の音に
吹き寄る風は
同じことなら
わたしの子孫に
伝えて欲しいものだ