紫式部集5 いづれぞと:原文対訳・逐語分析

4おぼつかな 紫式部集
第一部
若かりし頃

5いづれぞと
6西の海を
原文
(実践女子大本)
現代語訳
(渋谷栄一)
注釈
【渋谷栄一】
返し、  返歌は、 【返し】-作者の家に方違えに来た人の返歌。
     
手を見わかぬにやありけむ、 筆跡を見分けることができなかったのであろうか、 【手を見分かぬ】-筆跡を誰が書いたものか見分けることができない。
     
いづれぞと どちらからの筆跡かと 【いづれぞと色分く】-作者の姉の筆跡か妹の作者の筆跡かと見分ける意。
色分くほどに 見分けているうちに、 「色分く」は「朝顔」の縁。「見分く」と同じ。弁別する。
朝顔の 朝顔の花のように 【朝顔】-「朝顔」歌語。朝咲き夕べには萎んでしまう、はかなさの象徴。
あるかなきかに 萎れてしまいそうに  
なるぞわびしき なるのが辛いことです  
     

参考異本=後世の二次資料

*「返し よみびとしらず
いづれぞと色わくほどに槿のあるかなきかになるぞかなしき」(尊経閣文庫本「続拾遺集」恋四 一〇〇三)