枕草子100段 職におはします頃

五月の御精進 枕草子
上巻下
100段
職に
御方々

(旧)大系:100段
新大系:96段、新編全集:96段
(以上全て三巻本系列本。しかし後二本の構成は2/3が一致せず、混乱を招くので、三巻本理論の根本たる『(旧)大系』に準拠すべきと思う)
(旧)全集=能因本:ナシ
 


 
 職におはします頃、八月十よ日の月あかき夜、右近の内侍に琵琶ひかせて、端近くおはします。
 これかれいひ、わらひなどするに、廂の柱に寄りかかりて、物もいはで候へば、
 「など、かう音もせぬ。ものいへ。さうざうしきに」と仰せらるれば、
 「ただ秋の月の心を見侍るなり」と申せば、
 「さもいひつべし」と仰せらる。
 

(※旧注 琵琶行(白楽天)「曲終収撥当心画 四弦一声如裂帛 東船西舫悄無言 唯見江心秋月白」)