紫式部集11 霜氷り:原文対訳・逐語分析

原文
(実践女子大本)
現代語訳
(渋谷栄一)
〈適宜当サイトで改め〉
注釈
【渋谷栄一】
〈適宜当サイトで補注〉
もの思ひわづらふ人の、  もの思いして悩んでいた人が、 【もの思ひわづらふ人】-不明。
うれへたる返り事に、 嘆き訴えてきた返事に、  
霜月ばかり、 霜月ごろに、  
     
霜氷り 霜や氷りが  
閉ぢたるころの 閉ざしているころの  
水茎は 筆は 【水茎〈みづくき〉】-「水茎」歌語。筆、筆跡、〈手紙〉の意。
えも書きやらぬ

〈何とも書いてやれない〉

十分に書ききれない

【えも書きやらぬ】-副詞「え」…打消の助動詞「ぬ」連体形、不可能の意を表す。

〈これは「えも言われぬ(何とも言えない)」に掛けた表現と見る〉

心地のみして 気持ちばかりがしています  
     

参考異本=後世の二次資料

「しも月ばかりに物おもひける人のうれへたりける返事につかしける 紫式部
霜こほりとぢたるころのみづぐきはえもかきやらぬここちのみして」(吉田兼右筆本「玉葉集」雑一 二〇五〇)