枕草子122段 わびしげに見ゆるもの

いみじう心づきなき 枕草子
上巻下
122段
わびしげ
暑げなる

(旧)大系:122段
新大系:117段、新編全集:118段
(以上全て三巻本系列本。しかし後二本の構成は2/3が一致せず、混乱を招くので、三巻本理論の根本たる『(旧)大系』に準拠すべきと思う)
(旧)全集=能因本:126段
 


 
 わびしげに見ゆるもの 六七月の午、未の時ばかりに、きたなげなる車に、えせ牛かけてゆるがしいく者。雨降らぬ日、張り筵したる車。いと寒きをり、暑きほどなどに、下衆女のなりあしきが子負ひたる。ちひさき板屋のくろうきたなげなるが、雨にぬれたる。また、雨いたう降る日、ちひさき馬に乗りて、御前したる。人の冠もひしげ、うへのきぬも下襲もひとつになりたる、いかにわびしかるらむと見えたり。夏は、されどよし。